グローバル化で必要なのは、むしろ本国拠点の変革

 市場が多極分散したグローバル経済下では、本国が海外のものづくりの全てを支えるという「旧来型のマザー工場システム」は立ち行かなくなる。そこで第1に必要となるのは、各国拠点が現地の事情に合わせて自主的に製品設計を修正し、生産ラインを立ち上げるという、「海外拠点の自立化」である。前回は、ダイキン工業を題材として、同社が「自立化」をどのようにして進めたのかを観察し、理解を深めてきた。

 だが、「自立化」だけでは、マザー工場システムの変革は完了しない。第3回に説明したように、本国と海外を結び合わせた「トータルシステム」の変革は、海外拠点だけの改革だけでは完成しない。変化した海外拠点に合わせて、システム全体が調和するように、本国拠点側もまた姿を変えなければならないのである。

 具体的には、本国拠点は自社のグローバル生産ネットワークの先頭で、自社が目指していく次の時代の製品・工程を生み出し、それを海外拠点に発信していく場所でなければならない()。より先鋭的に、やや挑発的な言い方をするなら、そうした役割を果たせない本国拠点など、グローバル生産ネットワークの中ではお荷物でしかない。本国事業とは、そうした使命感を持たねばならない拠点なのである。

図●新旧マザー工場システムの比較

 さて、再び事例に戻ろう。ダイキン工業は、海外拠点の自立化と並行して、本国拠点も少しずつそのありようを変えている。ダイキンの形だけが答えではないが、国内下位からグローバル市場を制するまでに成長したダイキンは、日系ものづくり企業の1つの模範例となり得ると信じている。