これは農業が工業化するという流れである。逆の流れもある。今は三次元プリンターなどCADデータがあれば、誰でもが生産者になれる時代である。これを『日経エレクトロニクス』2012年11月26日号では「ハードの時代」と呼んでいる。CADデータが種、三次元プリンターなどが畑と見れば、これは農業である。良い種と良い畑が良い作物を作りだす。CADデータというDNAをまけば製品が生えてくる農場、それが未来の工場かもしれない。これも第二次産業というのは抵抗感がある。

 第三次産業も同様である。車が売れない。若者の車離れと業界は騒いでいる。実際、本屋から自動車雑誌のコーナーが消えつつある。確かに関心は失せてきている。しかし、東京などの例外的な都会以外、車は必需品である。無くては買い物にも、工場にもいけない。車離れというよりは、憧れから日常品への変遷と捉えた方が正しいだろう。“カーガイ”のための車ではなく、“一般の方々”のための車への変遷である。月に数百台しか売れないスポーツカーではなく、数万台売れるコンパクトカーの時代である。

 必需品なのに車は売れない。それは車が壊れないからである。自動車業界は汗を流し、血を流して安全、安心、信頼性の高い車を作っている。お陰で、自動車の寿命が延びている。1970年代はスクラップまで6年、現在は13年程度である。だから、20世紀の懐かしい車が今も道路を走っている。セドリック、アリスト、サニーにコロナ。壊れなければ売れないのは当たり前である。