「アイデアが枯渇する時」。ちょうど1カ月前の小欄で、こんなタイトルのコラムを書きました。なかなか答えの見つからない時代に、製品やサービス、ビジネスモデルを企画・開発する際の新しい発想をどこに求めるか。『日経エレクトロニクス』の特集記事をまとめるに当たり、どうしたらいいのかを悩んでいるという話でした。(コラム「アイデアが枯渇する時」はこちら

 実は、特集記事の執筆作業は、おかげさまで何とか今週終わりました。でも、正直なところ、「どうしたらいいのだろう」という悩みは続いています。普遍的なテーマだけに、たぶん一生悩み続けるのかもしれません。だって、アイデアの枯渇は記者である自分の喫緊の悩みでもありますから。

 詳しい内容は日経エレクトロニクスの12月10日号を読んでいただくとして、特集の取材で一人の有名なアイデアマンの話を聞きました。クラタスの制作者たちの「作ってみたいから作った」という言葉を聞きながら、このアイデアマンの話し声が頭の中でシンクロしたのです。

「ある日、突然」の理由は?

前田 悟氏。
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 その人物は、エムジェイアイ 代表取締役の前田悟氏。ソニーで世界初の無線テレビ「エアボード」や、自宅で受信したテレビ番組をインターネットを用いて遠隔地から視聴できるようにする「ロケーションフリー」を開発した技術者として有名です。Tech-On!のコラム「回想回帰 ――商品開発の現場から」で開発秘話を連載しているので、Tech-On!や日経エレクトロニクスの読者には、お馴染みかもしれません。(前田氏のコラム「回想回帰」はこちら

 さまざまな新しいアイデアを提案し続けてきた前田氏に、今回の取材で、ぜひ聞いてみたいことがありました。それは、同氏がTech-On!の連載で書いていたことについて。エアボードにつながるアイデアを考えていた際に「ある日突然」アイデアを思い付いたと述べていたのでした。(コラム「『エアボード』『ロケーションフリー』開発秘話(第1回)こちら

 「アイデアが枯渇する時」で紹介したように、アイデアは突然降ってくるもの。ただ、そのためには、前提条件としてアイデアのタネを頭脳に入力しておく準備段階が必要なはず。「そのタネが有機的に結合することでアイデアは生まれる」というのが定説です。では、前田氏の場合、どんな風にこの段階を実践したのか。それを確かめたかったのです。