『経営者の方からも「役に立った」という声をいただいてるんですよ』

 「日経ものづくり」の2012年5~10月号に連載した「海外工場を切り盛りする 技術者のための経営入門」の連載について、筆者である高橋功吉氏からそんな話を伺いました。コンサルタントである高橋氏は、多くの企業経営者や経営幹部との仕事上のお付き合いがあります。そうした方々から役立ったとの声が聞こえてきているというのです。

 同連載は、タイトルに「技術者のための」と銘打ったように、本来は財務諸表なんてきちんと見たことがないという技術者の方に向けたものです。海外進出の加速によって、技術面だけでなく海外工場の運営も技術者に任せるケースが増えていると聞いたことが企画の発端でした。連載で解説したのは、キャッシュフロー経営の考え方、貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)の見方の初歩、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)や在庫の削減といった工場の運営など、ごく基本的なことです。つまり、ごくごく初心者向けという位置付けの連載だったのです。恥を忍んで告白すると、技術系の記事ばかりを書いてきた記者自身も財務諸表を学んだことなどなく、P/LとB/Sの区別もつかないありさまでした。ですから、同連載を担当して大いに勉強になりました。

 技術情報誌である日経ものづくりとしては異色のテーマだったため、当初は読者に受け入れられるか心配していました。しかし、始まってみると読者の方からも比較的高い評価をいただき、担当者として胸をなで下ろしたのでした。意外に(?)読んでいただけたのは、経営を任されるといった差し迫った事情がなくても、中堅技術者ともなれば経営の基礎ぐらいは知っておきたいというニーズがあったのでしょう(連載を一部抜粋したTech-On!の解説ではかなり厳しいコメントを頂戴していますが…)。実際、知っておいて損はない情報だったと担当者として自負しています。

 ただし、経営者なら知っていて当たり前のことばかりだろうと思っていたので、冒頭のように経営層の方からの「役に立った」「勉強になった」との評価は、正直意外でした。しかし、高橋氏によると、世の中に財務諸表の解説本はたくさんあっても、工場における現場の視点を交えて経営数字の意味を解説したものは案外少ないのだとか。売上高数千億円規模の企業の経営層でも、日ごろの在庫削減や5Sの取り組みが経営上の数字にどう関係するのかといった基本をあらためて勉強する機会がなく、きちんと理解していないことが少なくないといいます。同連載では、なぜ在庫を減らすべきなのか、5Sには経営数字上どんな意味があるのか、滞留資産を廃棄しないとどんな影響があるのかといった点を平易に解説していただきました。そうした分かりやすさが受けたのでしょう。

 そこで、より深く学んでいただける機会として連載筆者の高橋氏によるセミナーを企画いたしました。同氏は、日本を代表する家電メーカーで海外経営責任者などの要職を歴任した後、コンサルタントに転じて数多くの経営や工場の改革を支援しています。その経験を生かして、5Sの意味から製造原価の考え方まで利益を出すための工場運営について詳しく解説してもらいます。P/Lって何?という方から、あらためて経営の基礎を学びたい方まできっと役に立つ情報が得られるはずです。ぜひご参加ください。

【おまけ】
 経営とは全く関係ありませんが、先日、2012年5月号の特集「性能で差をつけるなら自然の英知に学ぶ」で取り上げた生物模倣技術に関してテレビのインタビューを受けました。同分野の企業イベントがあり、そこで同技術分野の将来性などを聞かれました。放送はこちら(弊誌も一瞬映ってます)。私が出るのは10秒ほどですが、生物模倣技術自体は昨今盛り上がってきていますので、ご興味があればご覧下さい。