「自動運転車は、5年以内に一般の人が利用できるようになる」――。

 発言の主は米Google社の共同創設者であるSergey Brin氏。同氏は2012年9月25日に米国カリフォルニア州知事のJerry Brown氏をGoogle社の本社を招いて、自動運転車の公道走行試験を後押しする法案に署名する式典を開催したのでした。

 Google社が自動運転に関する研究開発を始めたのは2010年のこと。既に、30万マイル(約48万km)の走行試験を実施しています。Brown氏が自動運転車に関連する法案に署名したことを受けて、カリフォルニア州当局は2015年までに安全などに関する規制を定める予定のようです。同様の法案は2012年春、ネバダ州でも施行されています。

 Google社の発表をきっかけに自動運転に関する話題がグッと増えたのは、日経エレクトロニクスの2012年11月26日号の解説「“ぶつからないクルマ”、いざ普及へ」の取材を回っている際にも強く感じました。多くのメーカーが、衝突防止/警告システムの正統進化として、自動運転機能を位置付けていたのです。

 例えば、衝突警報システムを単眼カメラで実現したオランダMobileye社の共同創設者であるAmnon Shashua氏(同社 Chairman of the Board and CTO)は次のように語ってくれました。

 「高速道路などの交通渋滞時に自動で運転してくれる“ハンズ・フリー運転”を実現する製品の投入を2016年に始める予定だ。2018年までには自動運転車は大きな存在感を示しているだろう」――。

 日本の自動車メーカーも開発を急ぎます。日産自動車は、自動運転および自動駐車するEV(電気自動車)「NSC-2015」を2012年10月の「CEATEC JAPAN 2012」で披露しました。同社は、自動運転の用途としてまずは、渋滞したショッピング・センターでの自動駐車や非接触給電時の位置合わせなどを想定しています。

 このように、“自動運転できるクルマ”は技術的には実現できる水準になりつつあるようです。ですが、実用化の際には法制度の改正やドライバーの行動認識など、いくつもクリアしなければいけない課題もあります。

 「運転を完全に自動化するシステムの欠点は、ドライバーの集中力が持続しない点。運転者はいざというときに停止ボタンを押さなければいけませんが、集中力が持つのは20~30分程度です。このため、運転者の状態をきちんと把握するセンシング技術も今後さらに重要になるでしょう」――。

 こう主張するのは、国土交通省の第5期先進安全自動車(ASV)推進検討会で副座長を務める稲垣敏之氏(筑波大学大学院 システム情報工学研究科長)です。カメラで監視するのか、脈波計で計測するのか、それとも運転者の姿勢や運転操作から推定するのか。議論や検討の真っ最中で、優れたエレクトロニクス技術が求められているそうです。