2012年の液晶テレビ需要:パネル需要は上振れだが、セット需要は下振れ

 2012年のテレビ用液晶パネル価格は、42型、40型そして32型などで、第2四半期から値上がり傾向が続いていた。こうしたパネル価格トレンドによって、テレビ・ブランドに対するこれらパネル供給は体感として、2012年を通して比較的供給タイトであったと言える。そして、液晶テレビ用パネル出荷量は2012年下期で予想以上に増加し、2012年総計では2億2800万枚(前年比8.6%増)に達する可能性が出てきた。一方、液晶テレビ・セット出荷量は第1四半期から第3四半期にかけていずれも前年同期比1~3%の減少となり、2012年総計としては2億600万台(前年比0.4%増)程度への下方修正(前回予測は2億800万台)を余儀なくされよう。

 このように2012年の液晶テレビ市場見通しは、パネル出荷が上振れ傾向であるのに対して、セット出荷は下振れ傾向となっている。我々の2012年液晶テレビ・セット市場予測が正であるとすると、2012年末にかけてブランドにおけるパネル・セット在庫は積み増し傾向、ということになる。

 ここで、液晶テレビ用パネルとセットの出荷量を2010年から比較してみよう。「パネル:セット」の比率は、2010年が115%、2011年が102%、2012年が111%となる。この比率は何%が妥当か?という議論があるが、我々は「2012年では105~110%が妥当である」と見ている。テレビよりもパネルからセット出荷までのリードタイムが短いノート・パソコンやモニターのその比率は、2011年までの過去5年間平均で105%程度となっている。

 以上の分析から、2011年末時点でテレビ・ブランドにおける液晶テレビ用パネル・セットの在庫が適正水準であったとすると、2012年末時点では過剰気味ということになる。しかし、パネル・メーカーとテレビ・セット・ブランド間では、パネル価格動向やテレビ・ブランドの声から、2012年11月時点でも32型パネル供給はまだタイトな状況と言える。では、在庫は一体どこで積み上がっているのだろうか?

図1 全世界液晶テレビ・セット出荷数量とパネル出荷数量
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補助金政策に対応して、中国テレビ・ブランドで32型パネル需要が過熱気味か?

 まずは、32型サイズを抽出して全世界のパネル・セット出荷の関係を分析した(図1詳細レポートはこちら)。図1から、2012年の32型パネル出荷枚数に対する同セット出荷台数に対する比率は115%、とパネル供給過剰であった2010年の同比率117%に近い。中国政府による新省エネ補助金政策に対応して中国テレビ・ブランド各社が積極的な増産対応、32型サイズを中心にパネル・セットの在庫が積み上がってきているのではないか?――と我々は中国の32型のみに注目して考察してみた。

 2012年では中国液晶パネル・メーカー出荷量の90%を32型が占め、2012年第4四半期では3分の1程度を中国ブランド以外へ出荷している。一方、中国テレビ・ブランドは、30%程度を中国以外のパネル・メーカーから調達しているもようである。したがって、32型セットとパネルの中国のみの比較は意味があると言える。