元々パソコンメーカーだった米Apple社は、なぜ電話を再定義し、スマートフォン「iPhone」を世の中へ送り出したのか--。日本には、多数の世界有数の携帯機器メーカーと電子部品メーカーがあり、iPhone向けにも多くの部品を提供する力を持ちながら、なぜiPhoneは日本から生まれなかったのか--。中国はiPhone向けに重要部品や技術を提供していないのに、なぜiPhoneは中国で造られ、また、どうしてiPhoneのコピー商品が沢山造られたのか--。Apple社のスマートフォン「iPhone」を眺めていて、筆者の頭に浮かんできた疑問だ。

 そこには、恐らく複雑な原因があり、人によっても見方が異なると思われるが、筆者は、国民性、すなわち「人」の気質とも関係しているではないかと考えている。中国語には、「一方水土 養一方人」という言葉がある。「その土地の環境は人をつくる」という意味だが、それぞれの国々の環境が絡んでいるのではないかと推測している。

 日本人は、しばしば「職人」気質(かたぎ)と評される。これに対して筆者は、中国人は「商人」気質、米国人は「イノベーター」気質と言えるのではないかと思っている。その違いで、商品開発のコンセプト、プロセス、イノベーションに対する姿勢や考え方が異なってきて、それぞれ違う路線を歩むことになったのではないだろうか。もちろん、日本人も中国人も米国人も全員がそうだというつもりはない。ただ、全体的な特徴や傾向として、そう捉えても差し支えないのではないかと考えている。今回は、この点について論じてみたい。

究極を追求する日本人

 繰り返しになるが、日本人はしばしば職人気質と言われる。筆者もそのことは前々から知っていた。だが、あんまり実感がなかった。それがなんと、数年前にハイテクとは全く関係のない「玉子焼き」から理解できるようになった。