根底にアメリカンドリーム

 職人気質の日本人や商人気質の中国人と違って、世界を変えるイノベーターを数多く輩出している米国の国民気質について、筆者は「イノベーター気質」と捉えている。というのも、米国は基礎研究で世界をリードしているだけではなく、技術を生かして「潜在化したニーズ」を発掘して、次から次へと今までにない新しい商品やサービスを創り上げているからである。iPhoneは、まさにその数え切れない成功事例の1つにすぎない。それができるのは、米国には「アメリカンドリーム」の実現のために、冒険心にあふれ、新しいものに挑戦する人が多いからだ。

気質の違いが商品開発の考え方にも

 イノベーションを文化論的な「気質」という視点だけで片付けてしまうことに必ずしも賛同しない。しかし、一国一民族の文化とイノベーションとの間には断ち切りがたい関わりがあり、それを抜きにした議論は逆に現実無視の弊に陥ると考えている。

 気質の違いは、商品開発における考え方の違いにも反映される。

職人:技術主導…モノにこだわる、自己満足の傾向もある
商人:市場主導…顕在ニーズをつかんで、手段を問わずにいち早く市場へ
イノベーター:市場と技術を両方重視…潜在ニーズを見つけて仕掛けて実現

 職人であれば、技術重視で「良いものが売れるはず」と思うと考える一方、「商人気質」であれば、市場を重視し「売れるものは良いもの」と考えるという見方である。イノベーター気質ならば、「世の中を驚かせるものをつくる」との意欲がみなぎているという見解である。

 このように考えると、多くのイノベーションが米国から生まれるのは当然なことだろう。しかし、米国から生まれた斬新な商品は、職人気質の日本企業と商人気質の中国企業がなければ、世界中の人々に届けられない。iPhoneは日本メーカーから提供されるデバイス、中国での組立工場が欠かせないのだ。日本のデバイスメーカーが開発した高性能なスマートフォン向け部品は、技術イノベーションの1つといえる。一方、スマートフォンの開発/製造/販売にクラウドソーシングを導入した中国Xiaomi Tech社(北京小米科技)は、生産でイノベーションを起こしたともいえるだろう(関連記事)。