「Apple対Android、特許係争の終結は近い?」と題して、本コラムに記事を執筆した。筆者がなぜ係争終結は近いと考えるのか。この記事を振り返りながら、補足したい。掲載した係争の年表にも提訴や判決の経緯を追加した

 前回の記事では、和解が意外に見えると説明した。訴訟で、台湾HTC社が決定的な打撃を受けたようには見えない上、2012年8月以降、正式な和解協議が幾度か持たれたが、目立った進展も見られなかったからだ。両社が訴訟で上げた成果といえば、米Apple社が最初に提訴したITC(International Trade Commission;米国際貿易委員会)調査において、同社の特許1件(米国特許番号5,946,647)のHTC社による侵害および侵害品の米国への輸入差止めが2011年12月に正式決定されたことくらいだ。確かに輸入差止め命令が出されたのはHTC社にとって打撃だが、この特許はソフトウエアの変更によって回避することが可能だと考えられており、実質的な影響は少ない。

 2012年6月には、Apple社はITCに対してHTC社による侵害品の輸入が継続していないかを緊急に調査するよう請求したが、7月にその請求は棄却された。そのため、HTC社のAndroidスマホ製品は新製品も含めていまも米国への輸入が継続しており、実質的に同社の米国における事業は差止め命令による影響をさほど被ってはいない。HTC社会長のCher Wang氏は、2012年9月上旬の時点でApple社と和解する意思はない、とメディアに語っている。

 このように、和解成立前の時点では、外見上、両社双方に歩み寄りせざるを得ない致命傷が加えられたと見られる要素はなかった、と言える。