スマートシティを構築するための新たなアプローチが注目を集め始めた。成功の要素は「スマートメーター」や「スマートグリッド」に加え、「全体的アプローチ」や新サービスが大きなカギになってきた。スマートシティのあり方を議論する国際会議「Smart City Week 2012」(2012年10月29日から11月2日、パシフィコ横浜)注)を通じ、新たな都市構築ビジネスの方向性が明らかになってきた。

注)「Smart City Week 2012」は5日間の会期中、展示会入場者とコンファレンス受講者を合わせた来場者は約40カ国から2万2000人を超えた。国際会議と専門セミナーを合わせたコンファレンス受講者数は6982人と、昨年の5514人を大きく上回った。2013年の「Smart City Week 2013」は、10月21日から10月25日、横浜市のパシフィコ横浜で開催される予定。

 「スマートシティを構築するには、全体的アプローチが必要だ。簡単ではないが、この方向性は明らかだ」――。世界各地のスマートシティプロジェクトで存在感を示すスイスの多国籍企業ABB。同社でスマートグリッド(次世代電力網)の責任者を務めるJochen Kreusel氏は、こう力を込めて講演した。

 「全体的アプローチ」は、英語で「Holistic Approach(ホリスティックアプローチ)」もしくは、「Integrated Approach(インテグレイテドアプローチ)」と表現される。日本語では、全体的、総体的、統合的というニュアンスを持っている。

 ホリスティックアプローチという用語は、最近、医療や看護、健康、教育などの分野でよく使われている。人間存在を身体、感情、思考など多次元に捉えるとともに、自己、他者、共同体、社会、国家など全体的な視点で調和を目指すアプローチを指す。

 スマートシティの構築も、スマートグリッドというエネルギー技術だけでなく、運輸や通信、廃棄物などの社会インフラに加え、人の意識や行動、法規制の変革までを含めた全体最適を目指すことが必要と、Jochen Kreusel氏は強調する。

 具体例として、スウェーデンのストックホルムにおけるロイヤルシーポートプロジェクトを挙げ、「スマートメーターを導入しただけでは大きな変化はなかった。重要なのは、人の意識を変えるにはどんな情報が必要かだ」と、反省も込めて述べた。