新しいiPhoneが発売される頃になると、必ずマスメディアを賑わすのが、iPhoneに搭載される新しい機能についての憶測記事です。その中で、必ずといって話題になるのがNFCのリーダー/ライター(R/W)機能の搭載です。最近発売されたiPhone 5でも、発売前には搭載を噂され、背面が金属であることが分かると、前面カメラの周辺に搭載されるのではないかという憶測が流れたりもしました。
 iPhoneにNFCが搭載される――。こうした話題が何度も持ち上がるのには、それなりの理由があります。まず、米Apple社が、NFC関連の特許をいくつも持っていること。例えば、iPhoneをコンサートの入場チケット代わりに使ったり、iPhoneを回すことでドアの鍵の開け閉めに使ったり、ギフト券を読み込んだりと、さまざまなシーンを特許化しています。2010年に電子決済の米mFoundry社に在籍していたNFCの専門家を雇ったというニュースや、2012年10月に指紋認証の特許を持つオーストラリア企業Microlatch社とNFC決済のために契約したとのニュースが流れたりしました。

 記者自身もある方から、「Apple社がIATA(International Air Transport Association)に出向き、NFCを使った飛行機の搭乗ができるように働きかけていた」という話を聞いたことがあります。こう見ていくと、どうやら本気でApple社は着々とNFC搭載に向けた布石を打っているようなのです。もはや、iPhoneがNFCのR/Wを搭載するか、しないかではなく、いつNFCを搭載するか、の問題だといえるでしょう。

 ではその「いつ」です。秘密主義が徹底しているApple社のことですから、正直なところ記者にはうかがい知ることができません。ただ、Apple社の場合、先進的なイメージを持っているものの、採用技術についてはその実用性を見極めたうえで、先端を走るのではなく、ある程度、周囲の状況を見ながら採用するところがあります。例えば、LTEでは、先進国でサービスが始まっていた2011年のタイミングではなく、エリアがある程度広がった2012年にiPhone 5で対応しました。

 NFCに関しては、日本国外ではまだ決済などのインフラとして十分浸透していないことから、もう少しNFCが社会のインフラとして浸透してからと考えているのかもしれません。また、あるブログ・サイトでは、Apple社がNFCの取り組む理由として、iPhoneのみならず、MacやiPadなどすべてにNFCのR/Wを搭載し、コンテンツの共有をワンタッチで、できるようにすることだと予測していました。そうであるなら、全機種をNFCに対応させる準備が整うまで少し時間が掛かるのかもしれません。いずれにせよ、次のiPhoneを楽しみに待ちたいと思います。