日経エレクトロニクス、日経ものづくり、日経Automotive Technology、およびTech-On!の専門記者・デスクが、それぞれの視点で2012年のトピックを取り上げ、総括します。
専門記者が振り返る2012年
目次
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ARMコア・マイコン、この1年--いよいよルネサスからも
英ARM社のプロセサ・コアをベースにしたマイクロコントローラ(マイコン、MCU)の勢いが止まらない。ARMの発表によれば、マイコン市場全体に占めるARMコア・マイコンの比率は2011年に15%に達していた。2012年にはその比率がさらに上昇したと見られる。
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車載用蓄電池、この1年――EV不振で苦悩する電池メーカー
2012年は、数多くの車載電池メーカーにとって苦難の年となった。特に米国の電池メーカーは大きな打撃を受けている。記憶に新しいのは2012年10月に、米A123 Systems社が米連邦破産法第11条(Chapter11)の適用を申請したこと。
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次世代パワー半導体この1年――SiCが鉄道や産業機器に、GaNは耐圧600V品が登場
現行材料のSiでは実現できない大幅な効率向上や小型化を見込めるSiCやGaNといった次世代パワー半導体。2012年は、その実用化が大きく進んだ。中でも、採用が活発化したのがSiCダイオードで、鉄道や産業機器にまで広がった。
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大部屋連携、この1年――自動車メーカーではホンダが導入、部品メーカーも追随
ホンダは2012年4月、日本向け軽自動車の開発機能を、栃木県・芳賀町の本田技術研究所から軽自動車の生産拠点である鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)に移転した。鈴鹿製作所内の1室に軽自動車の設計、購買、生産技術、製造に所属する従業員を集め、そこで互いの意見をぶつけながら開発できる環境を整えた(図1)。いわば…
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中堅自動車部品メーカー、この1年――ポスト中国戦略に知恵絞る
売上高が100億~2000億円程度の中堅どころの自動車部品メーカーにとって、この1年は「ポスト中国戦略」に知恵を絞った年だった。この10年、部品メーカーが最優先で取り組んできたのが中国進出。それがようやく一段落した。その上、尖閣諸島の問題など“中国リスク”が顕在化した。いま、各社が中国以外の新興国…
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EMS/ODM、この1年――シャープとFoxconnが話題独占、迫り来る中国リスク
日本の製造業に携わる多くの関係者にとって、2012年ほどEMS(電子機器の受託生産サービス)企業の存在感を感じた年はなかった。きっかけとなったのは、2012年3月27日に、シャープがEMS世界最大手である台湾Hon Hai Precision Industry社を中心とするHon Haiグループ(…
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スマートメーター、この1年――事実上の標準仕様と目される東京電力の仕様策定が大詰めに
2012年は、国内でのスマートメーターの普及に向けた動きが本格化した1年だった。政府が「2016年までに電力の総需要の8割をスマートメーターで対応できるようにする」という方針を打ち出し、本格的な導入への機運が一気に高まった。中でも特に大きな動きがあったのが、国内最大の契約者を抱える東京電力だ。同社は…
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ディスプレイ、この1年――新技術が続々登場も大型と中小型で明暗
2012年のディスプレイ業界は、テレビを中心とする大型パネルとスマートフォンやタブレット端末を中心とする中小型パネルともに、新技術の話題にこと欠かない1年だった。とはいえ、実用化の面でみると、大型パネルと中小型パネルでは明暗が分かれた。
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加工技術、この1年──軽量化ニーズが革新を加速
2012年は加工技術の分野において、開発のトレンドがより明確になった。それは「軽量化」だ。昨年の東日本大震災以降、エネルギ不足の問題が継続的に議論されていることもあって、消費者の中で省エネの意識が高まった。販売の一線では「省エネでなければ製品が売れない」という状況になっている。こうした背景から、軽…
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マイクロプロセサ、この1年――モバイル向けプロセサが32/28nm世代へ
2012年は、スマートフォンなどのモバイル機器に向けたマイクロプロセサの競争がいっそう激しくなった1年だった。その激戦区に新たに参入する半導体メーカーがある一方で、一部の半導体メーカーは撤退の道を選んだ。また、パソコン/サーバー向けプロセサとモバイル向けプロセサのどちらも、半導体製造技術の微細化が…
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ワイヤレス給電、この1年――WPCやA4WP、そしてEV充電標準化の議論も
電力を無線で伝送する「ワイヤレス給電」技術に関しても、2012年は様々な取り組みがあった。なかでも、携帯機器の非接触充電に関する業界団体の動きや、電気自動車(EV)の非接触充電に向けた伝送方式や利用周波数への関心が、急速に盛り上がった1年となった。
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デジタルヘルス、この1年――新規参入の動きが加速、大手も中小も横一線の始動
「我々中小企業は今、『医療』に関連したテーマでなければ、銀行からの融資を受けにくいんですよ」─―。 2012年夏、東京都大田区にある、電子部品の自動組立機械や検査装置などを手掛けるものづくり企業「TSS」を訪ねた際、オーナー社長はこのように語った。
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タッチ・パネル、この1年――インセル型やカバー・ガラス一体型が離陸
2012年のタッチ・パネルは、スマートフォンの薄型化や視認性向上を図れる二つの新技術が離陸した。タッチ・センサを液晶パネルに内蔵する「インセル型」と、タッチ・センサをカバー・ガラスに形成する「カバー・ガラス一体型」である。
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半導体パッケージ、この1年――引き続きTSVベースの3次元実装技術に注目集まる
2012年、半導体パッケージ業界では前年に引き続き、TSV(Si貫通ビア)を用いた3次元実装技術に注目が集まった。
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HTML5、この1年――iOSとAndroidへの対抗軸を模索
「HTML5」。2012年はこのWebの中核技術が注目を集めた1年だった。HTML5とは広義には、HTMLおよびJavaScript、CSS(cascading style sheet)の最新仕様を指す。
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ネオジム磁石、この1年――ハイブリッド車が省・脱ジスプロを加速
高性能磁石の主役であるネオジム(Nd)・鉄(Fe)・ボロン(B)系磁石(以下、ネオジム磁石)では、課題である省・脱ジスプロシウム(Dy)が急速に進展した。日立金属やTDK、ダイドー電子(本社岐阜県中津川市)などがDyを全く含まないタイプやDy含有量を大幅に減らしたネオジム磁石をアピールしている。
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PLM、この1年 ―― 複数製品群、複数拠点にまたがる管理に関心
この5年間に12ヵ所もの工場を立ち上げたフォスター電機が、その成長の原動力としてPLM(製品ライフサイクル管理)システムを活用していることが明らかになった(雑誌記事の紹介)。工場ごとの工程の差、サプライヤーの差を許容しつつ、工場をまたがった増産や生産分担の変更に迅速に対応している。
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生物模倣、この1年――省エネ、低環境負荷であらためて脚光
近年、生物の仕組みや形状、構造などを工業製品に応用する生物模倣技術(バイオミメティクス)があらためて注目されている。生物は、長い進化の末に、少ないエネルギで高効率に機能する形状や、常温・低圧という通常の環境で複雑な構造を形成する仕組みなどを獲得した。そうした自然の知恵を工業製品に取り入れようというの…
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EV/HEVによるレース活動、この1年
HEVはコース上最速として定着、EVは来年に期待
モータを使ったEV(電気自動車)/HEV(ハイブリッド車)でレースをする「モーターでモータースポーツ」の動きは2012年に本格化した。EV/HEVが環境にやさしいだけでなく、速さも身に付けてきた証拠だ。
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スマホ特許訴訟、この1年―― 「独占vs共有」「既存vs新参」の対立に揺れた
2012年は、スマートフォンをめぐる特許訴訟に注目させられた1年だった。特に米Apple社と韓国Samsung Electronics社の係争は、8月に日米で判決が下り大きなニュースとなった。Apple社と、Android陣営の一つ台湾HTC社の訴訟も11月に和解の発表があり、話題をさらった。Te…