2012年11月初旬に東京で開催された「第26回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2012)」。この基調講演に、ファインテック代表取締役社長の中川威雄氏が登場しました。講演会場となった東京ビッグサイトの大会議場はほぼ満員。それもそのはず。世界最大のEMS企業である台湾Hon Hai Precision Industry社(通称Foxconn)の特別顧問を務める同氏が、「中国最大の製造業Foxconn」と題して講演したからです。

 私が中川氏の講演で最も印象に残ったのは、以下の話です。「Foxconnは自らのアピールポイントとして、顧客は欧米先進国の一流企業、生産基地は中国、マネジメントは台湾、生産設備は日本製とうたっている」(中川氏)。このうち、顧客である欧米先進国の一流企業といえば、誰もが思い浮かぶのが米Apple社です。日本にはソニー、パナソニックなど世界を代表する電機メーカーが存在しているにもかかわらず、Foxconnにとっては顧客層として欧米先進国の一流企業が最も重要と考えているわけです。背景には、日本の電機業界が総じて苦境に陥っており、組み立ての受注量や受注価格などの面でFoxconnにとって、うまみが相対的に低下していることがあるとみられます。実際、「Foxconnは現在、Apple社以外の企業からの製造受託ではなかなか利益を出せない状況」(中川氏)といいます。

 その一方で、Foxconnが「生産設備は日本製」ということをアピールしていることは、率直に喜びたいと思います。Foxconnは、世界最大の金型製造設備を持っていますが、そこでは「日本製の高精度工作機がずらりと並んでいる」と中川氏は話します。しかも、「規模だけでなく、生産技術面でもFoxconnは日本の金型工場を凌駕しているように見受けられる」(中川氏)とのこと。

 「日経ものづくり」が2012年11月号に掲載した特別寄稿「世界最大のEMS企業、Foxconnのものづくりがベールをぬぐ」では、中川氏がものづくりの視点から見たFoxconnの強みや課題などを、全15ページに渡って書き下ろしています(関連URL)。ライン内部の写真や工場の構内風景など、極めて貴重な写真も多数掲載した、これまでにない内容と自負しております。ぜひご一読いただけると幸いです。