とどまるところを知らないと見られていた、米Apple社と「米Google社=Android陣営」との訴訟合戦(本コラムにおける続編記事も参照)。11月に入って情勢が大きく変わった。Apple社とHTC社が和解したのである。11月10日、Apple社はHTC社との共同声明という形で、両社が和解し10年間のライセンス契約を締結して、すべての訴訟を取り下げると発表した。Apple社にとって、スマホ関連特許分野で2011年6月のフィンランドNokia社との係争終結以来の大型和解と言える。

 今回の和解で、Apple社は少なくともAndroid陣営と特許ライセンス契約を結ぶ平和的解決の意志があることを示すことができた。きっと今後の訴訟での裁判官の心証にも良い影響を与えることだろう。ひょっとすると、和解への流れが急速に強まるかもしれない。一方、両社の係争は多数の重要な特許問題(関連情報)を表面化させており、判決次第では特許問題の解決の方向性を決める可能性があった。結審せずに終結を迎えたことで、特許問題は棚上げになったままになってしまった。

 両社の係争を簡単に振り返ってみよう。Android陣営の主力3社である台湾HTC社、米国Motorola Mobility社そして韓国Samsung Electronics社は、2010年3月以降、Apple社と世界規模での特許訴訟を展開してきた。その中で、去る8月24日の米カリフォルニア州北部地区連邦裁判所での陪審員裁判でSamsung社に対して10億米ドル超の損害賠償支払いの評決が出された(Tech-On!関連記事)。これによって、Apple社の攻勢はさらに強まり、両陣営の総力戦がまだまだ続くと思われていた。事実、陪審員の評決が出された当の地裁でも、その後、両社はお互いに控訴しあい、12月6日に予定されている聴聞会に向けてさらに双方の主張を強めている。その法廷闘争の凄まじさは、HTC社、Motorola Mobility社との訴訟でも同様であるように見えていた。