実際には、対話イベントの最初や最後に、このOSTの手法で話すことがよくあります。対話の最後にこの手法を導入することで、ワールドカフェなどであちこちで話し合われた内容を、イベントの参加者全員で深く共有できるようになります。

 「フィッシュ・ボウル(金魚鉢)」という変わった名前の手法では、参加者が座る2重、3重の円座を設けます。中心部分の円座には話す人、その周りには観察する人が座って対話する手法です。意見がある人は中心の円座に参加し、逆に意見が終われば中心から退出して観察側に回るなど、話をする人と観察する人が柔軟に動いていきます。ちょうど、参加型パネル・ディスカッションという感じでしょうか。

 この手法は、参加者の多くがテーマについてあまり良く理解していない場合や、ゲストが語るストーリーを参加者に聞いてほしい場合などに効果を発揮します。イベントの最初に何人かのスピーチを聞くと、その日の論点が整理されて、気が付いたら自分も参加できそうな気になってくることはありませんか? ちょうど、テレビの討論番組を見ているようなイメージです。名称の「金魚鉢」も、外から対話を観察できるイベントの様子に由来しています。

「予定調和」がダメな理由

 他にも手法はありますが、結構多くの書籍がありますから、それを参考にするといいでしょう。折りを見て、この連載でも紹介していこうと思います。

 もちろん、ダイアローグの手法は一つを選ぶ必要はありません。複数の手法を組み合わせることで、参加者はゲームのような楽しさを感じることができ、創造性を刺激されるわけです。

 さまざまな対話手法をどう組み合わせるかについては企画次第。例えば、参加者には馴染みのないテーマで知識があまりなさそうな場合には最初に有識者を中心の円座に座ってもらう「フィッシュ・ボウル」で共通認識を深める。そして、会の最後に個人の思い述べために「OST」のような場を設定するといったようにイベントを進めていくわけです。

 企画を考えるに当たって注意すべきもう一つの点は、「予定調和に陥らないようにすること」でした。ここで言う「予定調和」とは、「何のトラブルやゆらぎもなく予定どおりに無事にイベントが終わってしまうこと」を指しています。

 なぜ、「予定調和」はダメなのでしょうか?