日本の新しいワイヤレス技術を表彰する「NE ジャパン・ワイヤレス・テクノロジー・アワード」。ここでは、日本のワイヤレス技術の最新動向やノミネート技術の概要を順次紹介していく。今回は、2012年10月2日に「CEATEC Japan 2012」で開催されたアワード審査委員によるパネルディスカッションの模様をお伝えする。(モデレータは蓬田 宏樹・日経エレクトロニクス副編集長)

  • 【審査委員】(敬称略)
  • 中村武宏 NTTドコモ 無線アクセス開発部 無線アクセス方式担当 担当部長 3GPP TSG-RAN 議長
  • 原田博司 情報通信研究機構 ワイヤレスネットワーク研究所 スマートワイヤレス研究室 室長 IEEE Dyspan standards committee 議長
  • 山田 純 クアルコム ジャパン 特別顧問 (前 本社シニア・バイス・プレジデント兼クアルコムジャパン代表取締役会長兼社長)
  • 笠井伸啓 ローデ・シュワルツ・ジャパン 代表取締役社長
  • 林 哲史 日経BP社 日経エレクトロニクス 発行人

——ワイヤレス技術の応用は、携帯機器から住宅やエネルギー・システムなどまで、ますます広がりを見せています。今後、必要となる新技術や、解決すべき課題などについて、ご意見をお聞かせください。

中村氏 長年、携帯電話の技術開発や標準化にかかわってきましたが、最近実用化が始まったLTEの延長上で近い将来までの通信トラフィック量には対応できると考えています。しかし、スマートフォンなどの普及に伴う動画関連サービスの急増によって、2010年~2020年の間に通信トラフィック量は500倍に増えると予想されています。こうした状況に対応できる大容量の通信システム環境が必要で、3GPPにおいても最大の課題に位置付けられています。

 また、スマートフォンなどの種類や台数の急増による通信トラフィックのパターンの多様化、制御信号の多様化に対応する技術の確立が重要になります。

低消費電力化と
ブロードバンド化に期待

原田氏 IEEE 802委員会の11と15、16、19、22に参加している中で、主に二つの方向に向かっていると感じています。一つは中村さんが指摘した超高速化、いわゆるスーパーブロードバンドです。なかなかブレークスルーが見えづらい状況ですが、従来は帯域を広げる技術だけで進化してきたところに、空間を使うMIMO(multiple input multipleoutput)が加わり、その先には空間と周波数、帯域まで一体化して使い切る技術が必要になるはずです。