日本の製造業は高い技術力・品質には定評があるものの、グローバル市場では苦戦を強いられている企業が多い。中でも今後の伸びが期待される新興国のBOP(ベース・オブ・ピラミッド、世界人口のうち40億人を占めるといわれる所得上の底辺層)市場では、存在感が薄い。日本企業はBOPビジネスにどう取り組んだらよいのか。国連で途上国向けの開発事業に携わり、それに限界を感じてNPO(特定非営利活動法人)のコペルニクを立ち上げてBOP向けに水やエネルギーなどのインフラ技術の普及を図っている中村俊裕氏に、現状と課題を聞いた。(聞き手は藤堂 安人=日経BPクリーンテック研究所)

――国連で開発援助事業を行ってきて、どこに限界を感じたのか。

コペルニク共同創設者兼CEOの中村俊裕氏
写真1●コペルニク共同創設者兼CEO(最高経営責任者)の中村俊裕氏

 国連の開発援助事業の中心はODA(政府開発援助)だが、貧困層の住民から離れたところでさまざまなことが決められていて、なかなか現場のニーズがくみ上げられていないことと、作業がルーチン化して創造的なアイデアが湧いてこないと感じたことが大きい。

 もちろん、こうした政府サイドの取り組みは今後も強化すべきだが、現場に即した草の根的な取り組みも大切ではないかと感じて、2009年9月にNPO法人のコペルニクを立ち上げた。活動を開始したのは2010年2月だ。

――NPOなら現場のニーズにきめ細かく応えられるということか。

 最初は村人にニーズを語ってもらって、それを広く公開してアイデアやソリューションを募集しようとしたが、なかなかうまく行かなかった。そこで、ニーズから出発するのではなく、まずソリューションを募ってそれらをリストアップした上で、ニーズと合致させようという方向に変えた。これによって、NPOとしての活動が軌道に乗り始めた。

 実は、世界を見渡すと、さまざまなベンチャー企業がエネルギーにしろ、水にしろ、さまざまなソリューションを考案しており、価格も安く性能も良いものがどんどん登場している。そうしたダイナミックで革新的なソリューションをニーズとうまく合致させる道筋が見えたと思っている。