2000年代の初期、あるシリコンバレーのイベントに参加した一人の日本人に出会った。彼は、シリコンバレーでモバイル・インターネットが流行っていないことを不思議がっていた。「米国では、日本みたいにケータイでのインターネット利用がいつ頃になれば盛り上がるのか」と本人が聞いてきた。2012年に、その答えはハッキリにした。スマホ・ブームのおかげで、シリコンバレーのベンチャー投資家や企業に、「Mobile First」(モバイルが先だ)という表現が流行っているからだ。Mobile Firstというのは、ほかの端末向けにWebサービスを開発・提供する前に、まずは携帯端末に対応するという意味である。

インドでのモバイル・インターネットのトラフィックがパソコンのトラフィックを超えたことを強調するFacebook社のVaughan Smith氏
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 この動きは、SNS大手の米Facebook社にも見られる。2012年10月19日~20日に米サンノゼ市で開催された「Global Mobile Internet Conference Silicon Valley」で、同社の副社長(Corporate Development)のVaughan Smith氏が、Facebookではパソコンが発生させているトラフィックより、携帯端末が発生させているトラフィックの伸びが高いと指摘した。Facebook社が2012年5月に新規株式公開をした後、急に伸びている携帯端末のトラフィックに対する同社が明確なビジネス戦略は見せていないことで、金融業界から強く批判された。Facebook社の株は、公開された当時には38米ドルのだったが、2012年11月8日現在の株価は19.99米ドルに落ちた。この一因が携帯端末戦略の遅れと言われている。

 Facebook社のSmith氏は、「2008~2009年ごろは、携帯端末向けの開発を担当している部隊は比較的少人数だった。しかし今は、この開発体制が完全に変貌した」という。同氏によると、Facebook社の技術者全員が、パソコン向けより携帯端末向けのソフトウエアを先に開発するように訓練されている。「もし、製品レビューの時に携帯端末以外の端末向けソフトウエアを上司に見せると、“携帯端末向けにやり直せ”と指示される」。