さて、自前のR&Dや設計に向けた動きを強めているブランド企業として台湾メディアが取り上げているのがAcer社とLenovo社だ。

 このうちAcer社について『工商時報』は、自社設計の割合を増やすことを目的に今後3年にわたって年率2割増のペースで開発陣営を増やすとする翁建仁プレジデントの発言を紹介。さらに、同社コンピュータ製品世界運営センター・コンシューマ向け電子製品事業部の高樹国氏の話として、「入門機の一部は引き続き受託生産企業に委託するが、ミドルエンド以上の機種については、受託生産パートナーとの関係を、これまでのODM方式から単純な生産委託のEMSに変えていく」と伝えている。また、『Apple Daily台湾版』(2012年10月2日付)によると、高氏は2013年の目標として、自社設計の割合を4割にしてEMSに委託、ODMは6割にとどめるとの考えを示したという。

 一方のLenovo社については、R&Dや設計を自前で行うばかりでなく、製造も自製率を高めていくのではないかとの観測が市場や業界に広まりつつある。具体的にはLenovo社が2013年、PCの自製率を12年の2割から3割に引き上げることを目標にしており、台湾系ODMに対する依存を弱めるというものだ。

 これに関し、Lenovo社で香港・台湾・韓国地区の総経理を務める李世傑氏は2012年10月25日、台湾の経済紙『工商時報』(同月26日付)に対し、「受託生産企業は『大レノボ一族』の成員だ。台湾系企業との提携の深度は変えない」と強調。台湾系に対する生産委託を減らすとのうわさを否定した。

 ただ一方で同氏は、「当社が近年、成功を収めている要素の1つは、製品を自社で設計し、自社で生産していることにある。そうすることによってはじめて、クリエーティブな新製品を出せるし、競合企業との差別化を図ることもできる。競合が慣れているアウトソーシング一辺倒の戦略からの脱却もできた」とコメント。その上で、設計、生産とも自前で手がけた製品として、Windows 8搭載の変形ノート・タブレット「IdeaPad Yoga」や、画面を360度開閉できる「ThinkPad Edge Twist」を挙げている。

Lenovo社が自社で設計、生産したというWindows 8搭載の「IdeaPad Yoga 13」
写真:Lenovo社