「中国でのビジネスは中国人主体で行うべき」という人材の現地化方針は持ちながらも、計画的な人材育成ができていない日系企業はいまだに多い。先日も、大手日系企業のメーカー総経理から次のような話をうかがった。

・指示を忠実に守る優秀なスタッフは育ってきたが、自ら経営的な課題を見つけ出すような幹部候補人材が育っていない。
・日本の工場現場が少なくなってきていることもあり、日本人駐在者が中国人を指導できるだけの十分な経験を積めていない。
・日本人駐在員と中国人の役割分担が曖昧で、中国人の優秀な人材にどこまで仕事を任せるべきかが定まっていない。

 他の日系企業でも同じ話をよく耳にする。問題と認識してはいるものの、効果的な手を打てていないケースが多い。

 多くの大手企業は、日本では充実した研修体系を整備している。最近では経営幹部育成のプログラムも導入済みであることが多い。しかし中国では、日本と比べると幹部候補者の人数が少ないこともあってか、管理職以上を対象とする体系的なインハウスの研修プログラムが未整備であるケースがかなり見られる。だが、中国での人件費が高騰する中、安い労働コストから人材が生み出す付加価値の大きさに競争力の重点を移していかなければ、この先中国現地法人としては戦っていけない。人材の付加価値を高めていくには、まず経営幹部層に優秀な人材を揃えてリーダーシップを発揮していくことが重要である。このような課題認識から、最近、中国人幹部を対象とした研修プログラムを構築する動きが多く見られる。