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「車体」と「台車」はどちらが偉い?

木崎 健太郎=日経ものづくり
2012/11/08 08:50
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 E233系電車は、JR東日本の最新鋭の通勤形電車です。この電車が最初に投入された中央線・青梅線で、残念ながら新造から1年も経たずに事故に遭った車両があります。2008年9月8日、青梅線青梅-東青梅間を約60km/時で走行中の上り1816列車が、踏切に進入してきた普通トラックと衝突しました。幸いなことに、列車の乗員と乗客にはけが人がなく、トラックの運転手も軽傷で済みました。

 ここで、事故の話題に振って「事故の事典II(2012年11月末発行予定、事故の事典の改訂版)」のお知らせをしたいわけではありません。この事故の話は、残念ながら事故の事典IIには出てきません。問題は、このE233系電車がその後どうなったかです。

 事故に遭ったのは「クハE233-61」以下6両の「青661編成」。2007年11月に落成したばかりでした。事故では、電車は非常ブレーキで減速しながらも、衝突後もトラックを車体右側面でこするように進行して、5両目がトラック位置にさしかかったところで停止。つまり1両目から5両目までが損傷を受けました。6両目以降は無傷でした(1816列車は、全体では青661編成の後に4両の「青466編成」が連結された10両編成でした)。

* 運輸安全委員会による事故報告書がこちらにあります。写真付きです。

 青661編成は、無傷の6両目を残して1~5両目は解体。JR東日本は、再利用可能な台車と電機品などの部品を取り外して、新たに同社新津車両製作所で新造した5両の車体に取り付け、生き残りの6両目と組み合わせて6両編成を復活させました。1~5両目の車両番号は、解体されたクハE233-61以下の番号をそのまま引き継いで使用。車内外の銘板には、当初のメーカーと、新津車両製作所が併記される形になりました。このような扱いになることは結構よくあることらしく、「修理名義での新造」などと呼ぶようです。

 さて、この「修理名義での新造」という言葉には、ニュアンスとして「本当は新造なのに手続き上は修理ということにする」という雰囲気が漂います。ですが、視点さえ変えれば、やはり「単なる修理」と捉えることができます。つまり「車両のうち、部品を1個交換する修理をした。その部品がたまたま車体という大きな部品だった」と。

* 正確には、1両目は一部の床下機器に破損がありましたし、他の車両も車体以外の部品を更新している可能性があります。

 車両から車体を取り除いたものを想像したときに、それを車両とは呼びがたいので、車体を部品といっては違和感が大きいかもしれません。しかし製品構成上はあくまで部品ですし、付加価値としても台車や機器と車体のどちらに重みがあるのかは、微妙なところです。

 例えば川崎重工業が2012年8月29日に、シンガポール陸運庁向けに地下鉄車両132両を受注したと発表した案件。おそらくコストダウンのために、川崎重工(と同社シンガポール法人)が中国の南車青島四方機車車両と共同で受注しました。川崎重工はプロジェクト全体の統括、設計、台車や主要機器の供給を行い、南車四方が車体の製作と車両の組み立て、工場試験を担当。川崎重工は、台車こそが車両のコア技術だと思っています。このことは想像ではなく、「日経ものづくり」2009年10月号の特集「日本の鉄道技術」の取材の際にも直接聞きました。

 私自身そうなのですが、なんとなく製品の中で筐体関係が重要で、そこを含めて最後に組み立てる「最終製品メーカー」こそが重要だ、とつい思ってしまいます。昨今、電機業界の最終製品メーカーの業績悪化が取り沙汰されていますが、韓国Samsung Eletronics社に負けた、といっているのはたいてい最終製品の話。しかし、最終製品の動向だけ見ても、製造業全体のことを捉えたことにならないのは、いうまでもありません。

 最終製品が売れなければ部品も使われないという見方もありますが、部品がなければ最終製品が造れないともいえます。パソコンのプロセッサなどの例を見れば、部品メーカーの地位が最終製品メーカーよりも下にある、などということはとても言えません。そして、以前よりも部品と製品は対等な関係になっているようにも思うのです。

 同じことは加工技術にもいえるでしょう。独特の付加価値を持ち、国際的にも通用する部品や加工技術を供給する国内企業(多くは中小企業)は、たくさんあります。特に、接合の分野では独自技術の開発が進み、例えば金属と樹脂を接着剤やボルトなしで接合し、引っ張り試験では接合面ではなく樹脂の母材が破断する、といった技術を持つ企業が国内では10社近く存在するようになっています。

 本日、2012年11月8日から東京・浜松町で「ものづくりパートナーフォーラム」(日経ものづくり主催)を開催します。他の企業には造れない部品の加工技術を持つ企業ばかりが出展しますので、ぜひ足をお運びください。電車の話は、あまりないかもしれませんが。

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