「これからのPLM」のコンセプト(考え方・目指す姿)とは

 「これからのPLM」のコンセプトは、ものづくり企業において、本質的に下記のような姿を実現することである。

◆ものづくり企業の川上機能においては、先を見通した製品やサービスを企画・開発・設計するため、過去の作り込み時の情報(*1)、あるいは市場で起きたトラブルや知見情報(評判、比較情報など)も入手し、分析(*2)しながらベース製品やサービスの企画・開発・検証を行い、必要な情報を生成する。

*1 開発設計プロセスでは、収斂させた成果物情報だけが蓄積されて広く生かされるが、収斂前の膨大な試行錯誤・知見など、無視されて再び使われることの ない情報も多いため、今後はこのような情報も活用したい。
*2 市場投入後、製品やサービスの実稼働状況や市場での評価情報を収集・分析)し、イノベーションに活用できるようにする。いわゆるM2Mを含むBigDataの手段をPLMのコンセプトに取り込んで、目的を明確化していくと良いと考えている。

◆次の工程(量産型なら派生製品の詳細設計、個別受注型なら受注製番の詳細設計)では、効率的に設計するために上流から得たベース製品やサービスの情報(*3)を加工し、さらにそれらの情報の整合性を適度に管理する。

*3 製品の設計情報、BOM情報、成果物情報、プロジェクト情報、原価情報など。

◆製品やサービスのライフサイクル(*4)にわたり、国内外の自社拠点間はもちろん、パートナー企業との間も含めたプロセス間に必要な情報を徹底的に活用(*5)し、できる限り一気通貫(*6)に連携活用する。

*4 企画~開発・設計~生産準備~購買・生産~販売~保守・ービス~市場~廃棄・リサイクルに至る流れ。
*5 製品設計データを公差解析やCAE、CAMなどのデータとして応用活用するなど。
*6 一気通貫の典型例はBOM連携である。引き合いBOM(個別受注の場合)~設計BOM~生産準備BOM~生産(個別受注では製番)BOM~サービスBOMなど、製品やサービスのライフサイクルにわたるBOM間の情報連携(構成管理、変更管理を含む)。

◆各業務プロセスの個別最適化を追求する。個別最適とは、業務プロセスや業務手順のムラ、ムダを取り去り、かつ次の工程に問題を流さないこと。そして、品質、原価、納期のフロント・ローディングを追求すること。

◆次のプロセスには、調達、生産、販売を含めたSCM(Supply Chain Management)による最適化が入るが、PLMと両軸となるものなのでここでは説明を省く。

◆製品・サービスを的確な時期に市場(お客様)に提供する。

◆製品・サービスのライフサイクルにわたり企業利益を最大化する。(利益最大化の貢献例としては、開発・設計納期短縮や市場投入時期の遵守、ライフサイクルにわたる品質ロスとコストの極少化、そして、顧客満足度向上などが挙げられる)。

◆1つの製品やサービスだけでなく、製品群やサービス群としてくくって、成果物や業務プロセスの作り込み情報、市場での評価情報など、必要な情報が見え、総合的に把握してマネジメントできるようにする(筆者がPLMのProductをこだわって複数形Productsにする理由である)。

 筆者が考える「これからのPLM」のコンセプトは以上だが、完成品OEMメーカーを想定して網羅的に書いたので、ユーザーの業種・業態、状況によってマッチしない点があることをご了承いただきたい。続いて、このコンセプトを実際に企業に展開していく方法について考えていこう。