9月11日に日本の尖閣諸島国有化から日中関係が悪化し、9月15日には、デモ隊による日系企業を狙った破壊活動が日本のテレビ・ニュースでも多く流れた。ここ上海では領事館へのデモは公安が見守る中、整然と行われていたが、上海近くの蘇州、無錫などでは、日本料理店への襲撃や日系工場へのデモ隊の侵入などが起こり、多くの日系企業の総経理は眠れない日々が続いた。

 18日の中国全土の反日デモ拡大を想定して、前日17日、日系工場では、従業員がデモへ参加しないための対応策の検討や、デモ隊の侵入を予測した、事務所のパソコンの避難など夜遅くまでその対応に追われた。そのおかげで大きな被害に至らずに留めた日系企業も多い。

 ある設立10年の、5000人を超える規模の大手機械メーカーでの話である。董事長は日頃から、気軽にオペレーターにも声を掛け、中国の日系企業としては上手に管理されている工場である。今回の日中問題の状況下、頼りになったのは設立当初から務める中国人幹部の存在であった。彼ら中国人幹部は自分達の大事な工場を自ら守るという強い意識、行動により、今回のような労働争議に発展しかねないリスクを回避したというのである。彼らのような中国人幹部がいなければ、騒動を回避することは難しかったといえる。