社中のメンバーも3年ほど前までは、イベントを開催するなんて大変なことだと思っていました。一介のサラリーマンである我々にそんなことができるのかと。

 でも、意外にやればできるものなんですよ、実は。我々の中に、プロのイベント会社で働く人間は全くいません。それでも、ちょっとした方法論さえ手にすれば、あとはやる気だけでイベントは開けるものなのです。

 もちろん、イベント自体は単なるツールです。開催することが目的ではありません。重要なのは、イベントでの対話を経て参加者が「何かアクションを起こすキッカケ」になること。そのためには、ダイアローグのコンセプトがとても重要です。

 そこで、まずダイアローグ・イベントのテーマを決める必要があります。そして、これがイベント開催の大きな一歩です。なぜなら、テーマを決める際に大風呂敷を広げたくなっちゃったり、何かつまらないなと思ってしまったり、話し合っても解決できないなと最初から可能性を閉じてしまったりしがちだからなのです。

身近な話題でも、十分にテーマになり得る

 でも、人間の悩みというのは共通なもので、意外に等身大の悩みをテーマにした方が対話は深まるもの。だから、かなりあ社中でイベントを開催する際には、自分たちが社会人として日頃もんもんと悩んでいることをテーマに設定します。

 かなりあ社中では、ワールドカフェ形式で数十人を集めた対話をベースにイベントを企画しています。だから、「1人で考えても、何となくもやもやして思考の堂々巡りになってしまいそうなこと」「少人数で話し合うと見解や意見が偏ってしまいそうなこと」「多様なものの見方を得た方がむしろ本質に迫れそうなこと」などはテーマにしやすい。1人では簡単には解決案が出てこないことにこそ、ダイアローグが役立つのです。(ワールドカフェの詳細については、連載第4回の「ルールを守ってもらう魔法の言葉」を参照。 記事はこちら

 このことに気が付いてからは、テーマ選びにはあまり困らなくなりました。だって、我々自身が悩み多きサラリーマンですから。そのまま「素」で提案すればいいのです。まさに、テーマは回り回って自分のところに戻ってくる。まさに「悩みは人のためならず」なんですね(笑)。

 例えば、2012年6月にかなりあ社中が開催したダイアローグ・イベントでは「社内失業」をテーマに取り上げました。「社内失業」という言葉にはさまざまな定義がありますが、我々が着目したのは「やる気」も「能力」もあるのに、何らかの事情で仕事がない人々です。社内失業者は、特に「製造業」で増えているという意見もあります。まさに「社内」で起こる「社会」問題です。

 社中のメンバーが問題意識をもつキッカケは、たまたま読んだ「社内失業」に関する書籍でした。この本について雑談をしたことがイベント開催につながりました。

 インターネットや雑誌などで社内失業について調べると、社内失業者の世間のイメージの多くが、マイナス・イメージです。「かわいそう」というやさしい意見から、「給料をもらって仕事をしないのはけしからん」という厳しい言葉まで。いずれにしても、イメージは良くない。

 社中のメンバーも最初はそう思っていました。でも、本当にそうでしょうか。