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あなたは「すっぱいブドウ」のキツネになっていませんか?

野澤 哲生=日経エレクトロニクス
2012/11/05 11:29
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 つい先日、カナダの人が日本で設立した新しいユーザー・インタフェース技術を手がけるベンチャー企業に取材をしてきました。その人は今は日本語がペラペラですが、大学まではカナダ。大学を出てから来日してこれだけ話せるようになるとは驚きです。

 そこで彼に、なぜ日本で起業したかを聞きました。その答えは「日本人は新しい技術を積極的に導入する風土があるから」というもの。こうした「日本人は新しい技術が好き」という話はこれまでの取材でもよく聞いたことですし、私自身もそうだと思っていました。

 ただ、最近、その確信が揺らぎつつあります。新しい技術と聞いて最初に返って来るリアクションにまず懐疑から入る声がずいぶん多くなってきた気がするのです。例えば、ロボット掃除機がそうでした。数年前にこのブログ・コーナーで、ロボット掃除機を買って使ったら便利という話を書いたのですが、いただいたコメントの大半は、ロボット掃除機は日本の家屋には向かない、というご指摘でした(関連ブログ)。  もっともな指摘もあるにはあったのですが、気になったのは、根拠のない思い込みに基づく誤解が多かった点。使ってもいないのに「どうせ××だろ」と決め付けてしまっている意見が少なくなかったのです。例えば、「私の部屋が広いからそんな機械を使えるんだ」、という意見がありました。どうしてそんなことが分かるのかと思いました。実はロボット掃除機は蓄電池で動くので、米国でも日本でもあまり広い家は電池の寿命が持ちません。「ロボット掃除機は広い部屋に向けたもの」というのは、思い込みにすぎないのです。

 ちなみに当時の私の部屋は2K。掃除の手間が大幅に省けるメリットは部屋の広さとはあまり関係がない気がします。しかも部屋には結構、物がたくさんあり、決して広いとはいえませんでした。「物がたくさん置いてある部屋には使えない」という意見もありましたが、そういう方の部屋は掃除自体をしないのか?と思ってしまいます。掃除の際は、置いてあるものは別の場所に移したりして片付けてからほうきなどをかけるでしょう。掃除をする限りは、たとえ一部屋でもロボット掃除機を使う意味はあると思います。

 価格が数万円と高いことも懐疑論が広がりやすい背景になっているのでしょう。イソップ童話には、飢えたキツネが、ジャンプしても届かない高さにあるブドウを見て、「あれはすっぱいブドウだ」と思い込む話があります。

 実際にはその後、米iRobot社の「ルンバ」をはじめとするロボット掃除機は日本でも人気がうなぎ登りに高まり、今や量販店ではもっとも目立つところにデモ・コーナーが設置されているのが当たり前です。結果的に人気が出ているのは、新技術に対する懐疑よりもやっぱり「新技術が好きな人」が多いからだとは思います。

 ただ、懐疑から入る声は、ロボット掃除機以外にも増えてきた気がします。例えば、太陽電池、有機ELなども、ツイッターなどを見るとなぜか懐疑論ばかり。正しい懐疑ならともかく、その多くに根拠がないことが多いのです。

 技術者、研究者ならばこうしたことはないかと思うとそうでもありません。例えば、ライバルとなる技術者や研究者が新しい成果を発表した際に、「あれは全然ダメだろう」という頭ごなしに否定する感情的な声を聞くことがあります。具体的にどこかどうダメなのかは分からず、「すっぱいブドウ」と同じ感覚で言っているように聞こえることがあります。

 こうした新技術に対する懐疑論が広がることは、日本全体にとって不幸なことではないでしょうか。事実とは異なる「欠点」や「課題」を作って最初に壁を築いてしまうことが増えてくると、日本人の良さである進取の気性に富む点が少しずつ失われてきているのではないかと心配になります。

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