スマートシティのビジネス環境が大きく変わり始めた。新興国での巨大開発プロジェクトを狙う形から、先進国を含めた各地域の特色を生かした経済成長力をいかに持続可能にするかという、よりリアリティの高い実ビジネスとしての色合いが強まっている。そこでは、各国・各都市が今、何に取り組み、どんな成果を出しているのかを世界に伝える「情報発信力」が改めて問われている。

リーダーを巡る競争が始まる

 スマートシティとは、環境負荷を抑えながらも、市民のQoL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)を高めつつ、成長を続けられる都市のことだ。健全な経済活動を継続するには、都市機能が必要だが、都市への人口集中はエネルギー問題を含め、環境負荷も増す。このため、各種行政サービスの整備が不可欠だ。しかし、世界的な経済不況の中で、これまでと同様の方法では、都市は機能的にもコスト的にも成り立たない。

 そこでスマートシティでは、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを導入したり、ICT(情報・通信技術)に代表される技術を積極的に採り入れたりすることで、新たな解決策を模索する。都市の姿が変わるだけでなく、市民の生活様式にも大きな意識改革を迫る。

 都市化に対する、こうした認識が浸透してきたことで、世界各地の首長の意識も変わってきている。すなわち、それぞれの都市が持つ特色を強調する、あるいは逆に目前の課題を解決することで、「我こそがスマートシティのリーダーだ」と宣言する。さらに、そこで構築した新たな都市インフラの仕組みを国内外に売り込んだり、住民をさらに呼び込んだりすることを重視しているのだ。

 実際、シンガポールやスペインなどは、スマートシティに関する国際会議を国を挙げて開催し、全世界に呼びかける動きを強めている。こうした国際会議の動向に詳しい、ある地方自治体の関係者は、「スマートシティのリーダーを巡る国際競争が始まっている」と評する。

国内4地域実証の最前線を3カ国語で発信

 スマートシティ市場に向けては、個々の製品の良しあしはもちろん重要だが、そこで生み出される都市サービスや、複数社が連携して築き上げた仕組みを“都市の将来像”として訴えかけなければならない。だが、これまでの日本は、「情報戦に弱い」と指摘されてきた。国内市場が大きいことに加え、高品質を武器に製品を販売してきたからだ。

 そんな状況に一石を投じる動きがある。経済産業省の外郭団体である新エネルギー導入促進協議会(NEPC)が立ち上げたポータルサイトJapan Smart City Portal(JSCP)である(図1)。同サイトは、横浜市、愛知県豊田市、けいはんな学研都市(正式名称は関西文化学術研究都市)、北九州市の4地域で取り組みが進む「次世代エネルギー・社会システム実証事業」の最前線の情報を伝える。世界市場を視野に、日本語に加え、英語と中国語でも発信する。

図1●新エネルギー導入促進協議会(NEPC)が日・英・中の3カ国語で運営する「Japan Smart City Portal」の画面例
日本語版
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英語版
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中国語版
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