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中国ネット販売界の風雲児(3)

永井麻生子=おあしすランゲージラボラトリー代表
2012/11/19 00:00
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今回紹介する書籍
題名:刘强东注定震惊世界
著者:尹鋒
出版社:北京聯合出版公司
出版時期:2012年8月

 今週は『刘强东注定震惊世界』(日本語訳:劉強東は世界を震撼させる)の第3回。本書は、今や中国インターネット販売業界第2位にまで上り詰めた京東商城のCEO劉強東の伝記である。今回は店舗販売で成功した京東がインターネット販売に専門化した理由と、その後のインターネット販売業界の熾烈な争いに関する部分をご紹介する。

 劉強東が京東マルチメディア公司を創業した1998年は中国にとってIT元年とも言える1年だった。この年に中国のネットユーザーが100万人を超え、捜狐、新浪などのサイトが営業を始めた。だが、劉強東はその流れに乗ろうとはしなかった。店舗での販売が順調だったからだ。しかし2000年前半からナスダック指数が下がっていたところに同時多発テロ事件の影響を受けて米国ではインターネット関連の企業が537社倒産しIT神話は消滅した。ITバブルの崩壊は中国にも影響を与え、電子機器業界は薄利多売の時代に入り、京東も例外ではなく苦境に立たされていた。その中で劉強東は「代理商(メーカー、あるいは卸商から商品を仕入れてそれを小売商に販売する仕事)」という商売の在り方に危機感を感じるようになる。流通経路の中でメーカーが直接小売業者に商品を流すようになれば存在価値がなくなってしまうからだ。そうなると自らメーカーや卸商になるか小売商になるしかない。劉強東は利益率などのことも考慮した結果、小売商となることを決意し、家電量販店としては最大手の「国美電器」を手本とし小売業者への移行を始める。その後も京東商城は順調に成長を続け2002年には光磁気商品の小売業としては中国最大になっている。

 そんな中、劉強東もインターネットに無関心ではいられない状況が出現する。伝染病SARSの流行である。SARSの流行により人々は外出できなくなった。その結果、インターネット販売をしなければ小売業は生き残れなくなるのである。この時まで劉強東はBBSが何かさえ知らないほどのIT音痴だったが、ここから京東のインターネット販売への進出が始まる。最初は一般的な掲示板へ商品について書き込みをすることから始まりホームページの立ち上げなどの活動を展開する。同時に「インターネット販売」というものに関して米Amazon.com社や米eBay社などを子細に研究し、この分野の可能性を確信するようになった。

 そして、2004年年末、劉強東は驚くべき決断をする。まだインターネット販売ではほとんど利益が上がっていなかったにもかかわらず、実店舗を閉めインターネット販売に専念するというのだ。最初はもちろん幹部の半数以上がその決断に反対したが、2005年半ばには京東商城の実店舗はすべて閉まることになる。

 では2004年の京東のインターネット販売業界への参入以降、この業界はどのような状況になっていくのであろうか。まず、京東にとってインターネット販売に参入する上での大きな障害は二つ。一つはメーカーとの確執である。二つ目は他社との競争である。

 インターネットで廉価販売をしようとする京東に対し、メーカーや代理業者は商品を卸さないようにするなどの対抗策をとった。だが、劉強東は粘り強くメーカーと交渉する一方、メーカーと代理業者間の隙間に入り込み、以前より付き合いのある代理業者から商品を入手していた(京東商城に品物を売ることによりこの代理業者も儲かるのだから、考えれば当然の話である)。結局、京東商城が多くの客を掴んでおり、また毎年3倍以上の成長を記録していることから、メーカー側としても京東と取引せざるを得なくなり2005年から2007年にかけて少しずつメーカーとの確執はなくなっていった。

 一方、第2の問題に関しては、現在も続いている「中国ネット通販戦国時代」ともいうべき状態なので次回詳しくお話ししたいと思う。

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