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中国ネット販売界の風雲児(2)

永井麻生子=おあしすランゲージラボラトリー代表
2012/11/12 00:00
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今回紹介する書籍
題名:刘强东注定震惊世界
著者:尹鋒
出版社:北京聯合出版公司
出版時期:2012年8月

 今週は『刘强东注定震惊世界』(日本語訳:劉強東は世界を震撼させる)の第2回。京東商城の創業者にしてCEOである劉強東の伝記である。前回は文革が終了し、劉家が再び運送業を始めたところまでをご紹介した。今回は劉強東の大学入学から起業するまでをご紹介したい。

 1992年9月、劉強東は官僚になるという夢を抱いて人民大学に入学する。清華大学に入るだけの実力もあったのだが、「人民大学=官僚」というイメージでこの大学を選んだのだという。しかし皮肉なもので、入学してすぐ、彼の専攻である社会学は政治とは無縁で、官僚になることは難しいことを知る。そこで彼の関心は「金儲け」に移っていく。そんな中、大学3年の時、彼はコンピュータープログラムの技術を身に着け、その技術で金を稼ぐようになった。当時はまだプログラミングができる人間が少なかったため、収入は高く、彼は在学中に20数万元(240万円程度)稼いだという。

 だが、彼が初めて本格的に経営に着手した分野は意外なことに飲食業だった。しかし、学生の身で飲食店を営むのは簡単なことではない。結局従業員の管理などが行き届かず巨額の損失を出して店をたたむことになる。しかし、彼はこの時の失敗から大きなことを学んだ。それは従業員を信頼することも大事だが、その信頼の基礎となる人事管理制度を作らなければ経営はうまくいかない、ということだ。この経験がのちの彼の企業経営に大きな力となる。

 1996年7月、彼は大学を卒業し日系の健康器具のメーカーに就職するが、その企業は1997年には大量の返品が出て販売網が崩壊してしまい、それを受けて劉強東は退社することとなった。

 しかし、その退社により劉強東は起業への道を歩みだすことになる。彼は1998年の春節後、起業の決意を胸に故郷の浙江省から北京の中関村にやって来る。この地は「北京の秋葉原」とも呼ばれ、多くの電子製品店が軒を連ねることでも有名である。そこで彼は2カ月間じっくりと中関村の電子製品店を観察してこの町の発展の秘密を知る。この町の店の発展の秘密、それは「在庫を持たないこと」だ。売り場には見本となる商品だけを置き、これをもとに客と値段の交渉などを行う。そして客が買う気になってから、品物を取りに行く。この時、客は店の人間が自分の倉庫にでも行っていると思っているが、実際はほかの店に商品を買いに行っているのである。このやり方だと店側には在庫のリスクがないが、客は買うと決めてから長時間待たされる。すると、客のうち3~4割は待つのが嫌になり、その商品を買うのをやめてしまう。劉強東はそこにビジネスチャンスを見いだした。

 1998年6月18日、劉強東は中関村の海沙市場に3.2m2の売り場を借りる。この市場は客の多くが販売業者であり、中関村でも人気のない部類の市場だった。しかし、彼はそこの2階で「京東マルチメディア公司」を始め、CD-Rレコーダなどの電子製品を販売した。前述のように当時の中関村の電機店は客が買ってから仕入れていたため、客に商品を渡すまでに大変な時間がかかっていた。そこで彼は人を一人雇って海沙市場に常駐させ「CD-Rレコーダならどんな機種でも2分以内にお届けします」と謳った。空いていた売り場を24も借り、各売り場に1台ずつCD-Rレコーダを見本として置いた。こうすれば市場中どこにでも2分以内に届けられる。この便利さが受けて、彼の店に付く客も増え、海沙市場で売れるCD-Rレコーダのうち80%が彼の店から売れるようにまでなった。自然と仕入れ先に対する発言権も増し、この年の終わりには純利益で30万元を超えるまでになったという。

 このようにして始まった劉強東の「電気製品小売業」だが、次回は店舗販売からインターネット販売への移行とインターネット販売業界の熾烈な戦いについて書きたいと思う。

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