人手不足の問題については、Compalの陳瑞聡・総経理も、同年8月末に開催した投資家向け説明会で、Windows 8搭載機の最大の懸念材料として、労働力をいかに確保するかという点を挙げていた。

 ただ、「フォックスコンやCompal、QuantaなどEMS/ODM大手の人集めは、部品メーカーに比べればまだましだ」と指摘するのは、蘇州に生産拠点を置くあるノートPCの部品メーカー。「EMS/ODMは、知名度の高さや比較的高い給料を武器に、ただでさえ少ない人材をさらってしまう。部品メーカーは荒野に放り出されて途方に暮れているようなものだ」と嘆く。

 これを裏付けるような記事が最近もあった。当社もウェブサイト閲覧には会員登録が必要2週間無料で読める試用会員も用意)で「5千人の求人に応募5人 中国華東のアップル供給業者が人材難で苦境に」として伝えたのだが、台湾紙『旺報』(2012年10月25日付)によると、Appleに供給する部品を昆山で生産するある台湾系サプライヤーが、生産ライン要員として5000人を募集したものの、応募者がわずか5人にとどまった、というものだ。

 この部品サプライヤーによると、欧米のクリスマスなど年末商戦に顧客が投入する製品の生産を確保するために、同社では最低でも5000人が不足している。ただ、工場のある昆山や蘇州で募集をかけても人が集まらない。そこで、陝西省など内陸に出向いて採用説明会を開催したのだが、応募してきたのはたったの5人だったという。

 人手不足が深刻化する背景について、このサプライヤーは、「労働力を輩出してきた内陸で都市化が進んだ結果、内陸に雇用機会が増えた他、子供に辛い仕事させたくないとする親が増えるなど、中国の社会状況が変化したことがある」と話している。

 蘇州に拠点を置く先のノートPC部品メーカーは、「Windows 8搭載機が、売れすぎて生産が追いつかないと嬉しい悲鳴を上げたい気持ちはもちろんある。ただ半面、人手を集められなくて納品がまったく間に合わず、本当に悲鳴を上げることになるのも怖い」と複雑な心境を漏らしている。