米Microsoft社の新型OS「Windows 8」が2012年10月26日、世界で一斉に発売された。
当コラムでは電子機器受託生産(EMS)で世界最大手の台湾Hon Hai Precision Industry社〔鴻海精密工業、通称:Foxconn(フォックスコン)〕が、スマートフォン「iPhone」やタブレットPC「iPad」の受託生産を手がけていることから、米Apple社の話題を取り上げることが多い。ただ、台湾系の大手ODM(Original design manufacturer)が主力とするのは、Windowsを搭載したノートPCの受託生産である。
台湾の金融情報サイト『理財網』によると、台湾系の主要ODM各社の2011年売上高にノートPCの占める割合はQuanta Computer社(広達電脳)が75%(デスクトップPCは12%)、Compal Electronics社(仁宝電脳)が90%、Wistron社(緯創)が69%(デスクトップPCは8%。いずれも2012年第1四半期)、Inventec社(英業達)が約72%(サーバーは23%)と、各社ともノートPCに対する依存が極めて高いことが分かる。
このうち、2011年のノートPC出荷台数が5500万台(表)で世界最大手のQuantaは、AppleのデスクトップPC「iMac」、ノートPC「MacBook Pro」「MacBook Air」の受託生産も手がけているといわれる。一方、その他の3社はいずれもWindows搭載機が主力。Quantaにしても米Hewlett-Packard(HP)社、米Dell社、中国Lenovo社(聯想)、台湾Acer社(宏碁)、台湾ASUSTeK社(華碩)など、Windows陣営向けの出荷の方が、台数的にはApple向けよりも断然多い。
ODM名 | "2010年の出荷台数(万台)" | "2011年の出荷台数(万台)" |
---|---|---|
Quanta Computer社(広達電脳) | 5210 | 5500 |
Compal Electronics社(仁宝電脳) | 4800 | 4050 |
Wistron社(緯創) | 2750 | 3155 |
Inventec社(英業達) | 1600 | 1600 |
したがって、当然のことながら、ODM各社はWindows 8登場によるPCの買い替え効果を期待している。ところが、Windows 8搭載機の生産を巡るODMの動静を伝える中国や台湾のメディアの報道からは、Windows 8の発売前にはついに、「出荷ラッシュ」というような威勢のいい話が聞こえてこなかった。それどころか、「雷声大、雨点小」というような、景気の悪い見出しを立てる記事がやたらに目立った。日本のことわざに当てはめるなら、「大山鳴動してネズミ一匹」というような意味。スマートフォンやタブレットPCの台頭でノートPCの成長が鈍化する中、ブランド各社はWindows 8搭載機の生産発注にも慎重になっていたようだ。