NTTドコモはその後、約490億円の追加出資などを行いましたが、米Cingular社によるAT&T Wireless社の買収などを経て、結果的には米国市場での影響力拡大とまでは至りませんでした。

TD-LTEの行方は

 今回のソフトバンクのSprint Nextel社の買収では、7割の株式を握るとするほか、孫氏自ら経営に積極的に関与するとしています。AT&Tのときと異なる状況に発展するのか、大変興味深いところです。

 技術面でも注目点があります。ソフトバンクは傘下のWireless City PlanningによるTD-LTE互換の「AXGPサービス」を国内で進めているなど、TD-LTEに積極的です。Sprint Nextel社は、TD-LTEのサービスを予定する米Clearwire社の経営権を取得しています。中国でも、大手事業者のChina MobileがTD-LTEに積極的な方針を示していることから、今後同技術の展開が早まる可能性もありそうです。こうした海外の事業者やサービスの動きに、NTTドコモのサービスや技術がどう対応していくのか、その点も大きな注目点となります。

 実は、そのNTTドコモの今後の方向性の一端を知るチャンスが、来週あります。NTTドコモの移動機開発部長の照沼和明氏が、弊社(日経BP社)が主催するイベント「 FPD 2012/モバイルテクノロジー2012」で基調講演に登壇します。移動機開発の観点から、移動通信の今後の動向について語っていただけるということで、私も大変楽しみにしております。入場は無料ですので、同社の移動機開発戦略に興味のある方、ぜひご聴講されてはいかがでしょうか?(このほか、NTTドコモなどのワイヤレス給電サービスへの戦略NFCワイヤレスM2Mの将来動向の講演もあります)

 ソフトバンクの海外戦略の影響は、端末ハードや基地局装置のみならず、コンテンツやサービスの海外展開という大きな効果も期待できます。NTTドコモもさらなる成長のため、新領域に乗り出していくのは確実ですが、その一つのベクトルの先にある“海外”の位置づけが、これまで以上に大きくなっていることは間違いないと言えそうです。