課題[2]サプライチェーンの高度化

「国内ではサプライヤやODM、OEMなど協力会社の品質、納品、契約について管理レベルが保たれているが、海外では協力会社の方針や考え方が国により異なることが多く、関係の構築や維持が難しい」

 これは、ある自動車部品メーカーの開発企画部部長によるコメントである。一般的に国内のサプライヤは海外のサプライヤより融通が利くところが多く、設計情報や契約内容に多少不十分な点があったとしても、いわゆる「阿吽(あうん)の呼吸」で対応してくれることもある。しかし、このような関係に慣れた企業が海外に進出すると、取引先数の増加以上に取引先との付き合い方で悩むことが多い。また、阿吽の呼吸が通用する国内サプライヤとの関係の中で、事務的な管理中心の役割を果たしてきた担当部門のリソースだけでは、海外展開への対応に無理がある場合も少なくない。そこで個々のタスクとスキルレベルを明確にし、体制から見直していく必要がある。

「環境変化に追従したサプライチェーンの継続的な最適化が難しい」

 これは、電機メーカーD社のCIOのコメントである。いまや調達、生産、販売がグローバルで行われ、その最適化が求められる時代である。環境変化に合わせて部品生産拠点や物流拠点、組立拠点、出荷拠点、そして取引先の最適化を図っていくためには、変化を前提として、常に現状把握から分析、改善というサイクルを回していく仕組みを構築する必要がある。

 開発部門においても、このような総論に対する反対はないが、その重要性をきちんと認識しているとはいえない企業も多い。そのことが最も顕著に表れるのが、PLMシステム選定の場面である。開発部門主導でPLMシステムの選定が行われると、サプライチェーンの継続的な最適化に関わるPLMとERPの連携に関する仕様よりも、CADとPLMの連携や、設計者が使用する入力画面の分かりやすさの方が重視される場合も少なくない。開発部門が最も求められるのは顧客への価値提供だが、利益を生み出す商品開発を行うには、サプライチェーン高度化への貢献についても、より具体的に検討していかなければならないのである。

 次回は、以上で述べた課題に加えて、さらに他の2つの課題を共有するとともに、本連載のテーマである3次元データプロセス改革とこれらの課題の関連について述べる。