いわゆる専用機だけでなく、さまざまな機器にロケーションフリー機能を搭載するという(2)を推進するために、ライフ・スタイルが分かりやすい名称であるべきと判断し、(1)の発表を実施したのだった。この名称で統一したのだが市場でもすんなりと受け入れられ、ロケーションフリーだけでなく、後に短縮した「ロケフリ」という愛称でも呼ばれるようになったのである。

 ちなみに「ロケーションフリー」「ロケフリ」は、ロゴと共に商標登録しているのであるが、よほど分かりやすい言葉だったか、競合他社からの異なる分野の機器まで「ロケーションフリー」という言葉が使われるようになった。その都度、広報経由で商標権をその企業にお伝えしたのを覚えている。

米国事業をテコ入れ

 国内でのプレス発表を成功させた直後の2005年3月初旬、私は米国に出張し、販売状況やパソコン向けの新ロケフリの導入時期についての議論を進めていた。国内市場に投入する7型品は既に米国市場に投入済みであり、発売までにトラブルが発生する可能性は低いと判断したためだ。

2005年4月に国内市場で発売した7型の「LF-X5」 (写真:ソニー)
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 私がわざわざ米国に足を運んで、米Sony Electronics Inc.(SEL)の担当者と議論したのは、米国でのロケフリ事業のテコ入れを図るために他ならない。米国市場へは2004年10月に発売されたにもかかわらず、2005年3月時点でロケフリの専用マーケティング部隊は組織化されていなかったのだ。

 当時のロケフリ事業の担当者は、前回の連載で紹介したSEL社所属の日本人と米国人の二人のみ。米国人に至っては、他の業務との兼務である上、General Maneger(GM)の肩書きがあるにも関わらずビジネスの経験が浅い人材だった。日本人担当者のみが市場導入から宣伝、広報までのすべての業務をこなしている状況だったのだ。新規商品を離陸させるためにも、SELに組織的なバックアップを要求しなければという思いを出張中に強くしたのであった。

最終日に大事件