iPadで遠隔操作できる初の顕微鏡

 そのナノフォトンが2012年9月、タブレットPC「iPad」を使って遠隔操作でき、その画面上でサンプルの映像も見ることができる世界で初の光学顕微鏡「RAMANtouch」と「RAMANview」の商品化に成功して発売した。その専用ソフト「ローラス」も独自開発した。

「RAMANtouch」
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「RAMANview」
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 ナノフォトンは、細胞などサンプルの物質の種類を見分けるラマン分光器と、構造や形を見るレーザ走査顕微鏡を合体させた機能を合わせ持つ「ラマン顕微鏡」を世界で初めて開発した。「ラマン顕微鏡」は、細胞を見る場合に、蛍光剤で染めないで、細胞の物質分布を3次元のカラー映像で見ることができるのが特徴。電子顕微鏡が白黒2次元写真なのに対して、こちらは3次元カラーイメージングといったところだ。投薬に対する細胞の変化、細胞内の小器官、脂質、核などの無染色画像化が可能で分子構造の違いまで見ることができる。半導体やカーボン・ナノチューブなどの材料の評価分析にも利用できる。

 今回の新商品はそのコンセプトを発展させ、商品力を強化したものである。接眼鏡がなく遠隔操作できるようにした狙いは、人が極力サンプルに近づかなくてもいいようにするためだ。熱や振動などの影響を排除できる。iPadの画面上でサンプルを見ることができるため、世界中の顧客先で離れていてもリアルタイムに説明ができる。そしてiPadで操作できるため、オペレーターにとっても使い勝手のいいヒューマン・インタフェースとなっている。

 ナノフォトンの取締役会長を務める河田教授は「顕微鏡のオペレーターはラマンのことを知らない人も多い。医学や半導体の研究者でもラマンの知識があるわけでもない。そうした異分野の人でも使いやすい設計にしたことは大きな特徴」と説明する。

 さらに軽量化も進め、「RAMANtouch」は従来のナノフォトンの類似顕微鏡と比べて4割減の70kg。完全な新商品である「RAMANview」は30kgで持ち運びやすくなった。

 これまでの顧客は国内外の研究機関や企業。すでに中国やインド、韓国などに輸出実績もあるが、国内だけではなく海外販売も強化していく。