“変形デジカメ”と称されるカシオ計算機の「EXILIM EX-TR100」。誕生のきっかけは、あるデザイナーの悩み。デザイナーと技術者が互いの思いをぶつけ合いながら一つの製品を生み出すプロセスは、新製品開発の参考になる。全6回の開発物語の第5回である。

「普通のカメラとデザインが全然違うってことは、もちろん実装も違うものになる。そもそも、これ、どうやって構成するんだろう?」

 実装担当の黒川智康(現・カシオ計算機 羽村技術センター 研究開発センター 第二開発部 第22開発室)は、完成のイメージを持てずにいた。設計部門が関わる開発が始まった、2010年4月ごろだった。

 デザイナーから“変形デジカメ”の提案を受けた最初の印象は、「かなり奇抜で、インパクトがある。面白い商品を提案してきたな」といったもの。と同時に「近未来的で、現実離れしている」という思いも膨らんだ。