外堀を着々と埋める
設計者たちの意見を持って次に向かったのが、事業部長を務めている高島進(現・カシオ計算機 取締役 研究開発担当)の席だ。長山は、高島にデザイン・モックを見せて説明した。
「面白い」
ここでも好感触を得ることができた。設計者、そして事業部長のお墨付きを得た変形デジカメ。その次に見せたのは、営業部門の担当者である。「ものは作れる、トップも良いと言ってくれた。では、売れるのか?」(長山)。このことを確かめたかった。
こうした思いを胸に、長山は営業の定例ミーティングに参加する。
「じゃあ、これでミーティングを終わりにしましょうか」
「あっ、すみません。ちょっとだけ時間をもらってもいいですか」
ミーティングの最後、長山はジャケットの内ポケットに忍ばせておいたデザイン・モックをおもむろに取り出す。チャンスがあればすぐに説明できるように、常に持ち歩いていたのである。
「ぜひ、俺たちにやらせてくれ」
営業からの反応もまずまず。特に、米国の営業チームが本気になってくれた。