徐々に理想へ近づく

「穴を開けたら、ストラップを通せそうだな」

ようやく筐体に穴が開いた(指で指しているデザイン)。このときはストラップを通すことを想定していた
ようやく筐体に穴が開いた(指で指しているデザイン)。このときはストラップを通すことを想定していた
[画像のクリックで拡大表示]

 TR100の開発者の一人である神谷享(現・カシオ計算機 デザインセンター プロダクトデザイン部 第一デザイン室)はこんなことを考えながら、一つのイラストを描いた(右の写真)。彼の頭の中にはこの時、可動式のフレームという発想は全くなかった。

 このイラストを基に幾つかのデザインを考えていくうちに、「徐々に理想に近づいていった」(長山)。そして、カメラの持ち手として可動式のフレームを取り付けるというアイデアが浮かんだ。液晶ディスプレイを囲むように、ぐるりと1周、金属フレームを付けるのだ。

「これで持てますね」

「おっ、いろんな形にできるじゃん」

「自分撮りもいけそうだね」

 メンバーたちの評価も上々。何より、可動式フレームというデザインが、しっかりと機能性を備えていた。

 これで、TR100の方向性がはっきり決まった。2008年末の打ち合わせから、既に2カ月が過ぎていた。