“変形デジカメ”と称されるカシオ計算機の「EXILIM EX-TR100」。誕生のきっかけは、あるデザイナーの悩み。デザイナーと技術者が互いの思いをぶつけ合いながら一つの製品を生み出すプロセスは、新製品開発の参考になる。全6回の開発物語の第1回である。

(写真:加藤 康)
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「あっ、フレームが動くんだ」

「置いて撮影できるの?!」

 2011年2月。パシフィコ横浜で開催されたカメラ関連の展示会「CP+ 2011」の会場に人だかりができているブースがあった。そこで来場者の注目を集めていたのが、カシオ計算機が開発したコンパクト・デジタル・カメラ「EXILIM EX-TR100」(以下、TR100)である。

 TR100の特徴は、変形させることで多様な撮影スタイルに対応できる点。レンズ部を中心にフレームを360度回転させたり、液晶ディスプレイを270度回転させたりするなど、自分撮りや集合写真、動画といった撮影状況に合わせてカメラ形状を変えられる。

 “変形デジカメ”とも称されるTR100。この斬新なデジタル・カメラの開発は、あるデザイナーの疑問からスタートした。話は2008年まで遡る。