暴動騒ぎが収まったと思ったら、今度はストライキである。

 電子機器受託生産(EMS)世界最大手の台湾Hon Hai Precision Industry社〔鴻海精密工業、通称:Foxconn(フォックスコン)〕の中国山西省太原市にある工場で2012年9月23日、従業員と警備員のいさかいが、従業員2000人の暴動に発展。米Apple社(以下、Apple)の新型スマートフォン「iPhone 5」関連部品を生産していると目される同工場の操業が1日停止する事態になったことは、当コラムでも前回取り上げた。それから2週間もたたない同年10月5日、今度はフォックスコンのiPhone主力工場である河南省鄭州工場で、工員3000~4000人が参加する大規模なストライキが発生したと、同月5日から6日にかけて内外のメディアが報じた。

 これについて、同月8日付の中国紙『中国証券報』は、フォックスコンのスポークスマンが7日、同紙に対して騒ぎがあったことを認めたと報じた。ただ同スポークスマンは、ストに参加したのは300~400人であり、2時間ほどで解決したと説明。iPhone 5の生産にも影響は出ないと強調した。

 同紙によると、ストの参加者はiPhone 5の品質管理部門の従業員で、同年10月初旬の国慶節(建国記念日)の8連休に会社側からiPhone 5の生産が間に合わないことを理由に出勤を求められていた。この従業員らによると、フォックスコンの首脳やAppleが、iPhone 5の設計に欠陥があることを知りながら、品質管理に対して過酷な要求を出していたため、検査の担当者らは相当なストレスを抱えていた。こうした状況を背景に、品質検査の社員とライン従業員らの間には、製品の出来を巡って言い合いが絶えなかった。しかし会社側は仲裁に入るなどの措置を取らずに放置していたことから、検査員らが無責任だと憤り、検査員全員のストライキに発展したのだという。

 鄭州工場のある社員は同紙に対し、「アルミ筐体の凹みで合格の基準は0.02mmとされているが、この数字は目視で確認できる限界だ。過酷な要求に応じるため検査員は日常的にストレスを抱えている他、連休にも休めない」と話している。

 暴動、人手不足、人件費高騰と、フォックスコンで相次いで表面化した問題は、中国での製造が限界に近づきつつあることを示唆するものだということを前回、当コラムで指摘した。今回のストライキとそれに至る背景もまた根は同じところにあるといえよう。鄭州工場のストライキに関する中国証券報の報道については、当社もウェブサイト閲覧には会員登録が必要2週間無料で読める試用会員も用意)で「iPhone 5工場ストライキの全貌 中国紙の報道から」としてさらに詳しく伝えているのでご一読いただきたい。