さて、こうしてApple最大のサプライヤーであるフォックスコンで騒動が相次ぐ中、2012年10月8日には「中国企業8社がAppleのサプライチェーン入りも、利益の分配は2%のみ」という見出しを付けた記事が、中国系サイトのニュース欄に掲載された。大型連休最終日の報道だったためか、中国の国外でこれを取り上げたメディアはほとんどなかったようだが、配信元は中国のポータルサイト「Sina.com」(新浪網)。内容を見てみると、iPhone 5の700米ドルのうち、ヘッドホン、バッテリーなど中国系の供給業者が提供する製品のコストは全て合わせても20米ドル程度で、全体の3%にしかならないと指摘。さらに、中国の証券会社、Huatai Limited Securities(華泰聯合証券)がiPhoneの利益を分析したところ、Appleが58.5%と半分以上を独占。韓国、日本の企業がそれぞれ10%を得ているのに対し、中国は2%に満たないとしている。
EMS/ODM(Original design manufacturer)業界の動向を伝える当コラムでは、毎回のように中国のことを取り上げているが、登場する企業はフォックスコンをはじめ、ほとんどが台湾系企業である。Appleが2012年1月13日、「Apple Suppliers 2011」として発表した156社のうち、台湾系企業はフォックスコンをはじめ33社。これに対して中国系は、先の記事の見出しにもあったように8社。EMS/ODM業界において、製造拠点としての主力は中国だが、EMS/ODMやそれを取り巻く部品サプライヤーの主力は台湾系、という構図である。
さてAppleが中国系サプライヤーの8社として挙げたのは、中国市場に上場しているAnjie Insulating Material社(安潔科技)、Universal Scientific Industrial(Shanghai)社(環旭電子、図)*、BYD社(比亜迪)、香港市場に上場するAAC Technologies Holdings社(瑞声科技)、未上場のKunshan Changyun Electronic社(昆山長運)、Tianjin Lishen Battery Joint-Stock社(天津力神)、Lens One Technology Shenzhen社(藍思科技)、Suzhou Panel Electronic社(蘇州面板電子)だ。Appleは156社のサプライヤーの供給内容については言及していないが、台湾メディアや中国系の証券会社などの分析をまとめたのが(表1)である。
* Universal Scientific Industrial(Shanghai)社(環旭電子)は、台湾Advanced Semiconductor Engineering社(日月光)グループ傘下、Universal Scientific Industrial社(環隆電子)の中国上場子会社。
メーカー | 供給内容 |
---|---|
Anjie Insulating Material社(安潔科技) | 絶縁体、PMMAパネル |
Universal Scientific Industrial(Shanghai)社(環旭電子) | 無線通信モジュール |
BYD社(比亜迪) | バッテリー |
AAC Technologies Holdings社(瑞声科技) | マイクロホン、スピーカーモジュール |
Kunshan Changyun Electronic社(昆山長運) | 機構部品 |
Tianjin Lishen Battery Joint-Stock社(天津力神) | バッテリー |
Lens One Technology Shenzhen社(藍思科技) | カバーレンズ |
Suzhou Panel Electronic社(蘇州面板電子) | コネクタ、ケーブル |