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「高利貸し危機」を乗り越える温州人(1)

永井麻生子=おあしすランゲージラボラトリー代表
2012/10/15 00:00
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今回紹介する書籍
題名:温州资本干的就是和你不一样
著者:周徳文
出版社:浙江人民出版社
出版時期:2012年3月

 今週からの3週間は『温州资本干的就是和你不一样(温州資本がすることはあなたと違う)』をご紹介する。「温州」は浙江省の東南部に位置する人口912万人(2012年時点)程度の小都市だが、中国人が「温州」というときに頭に浮かべるのはその地理的な特色ではない。温州人は「東洋のユダヤ人」とも言われ、その商売のうまさは多くの中国人にとって畏怖と尊敬の対象になっている。その一方で「温州靴」といえば粗悪品の代名詞とも言われており、「温州人」全体に対する中国人の印象は複雑なものだ。

 「商売がうまい」という点では、多くの中国人が彼らに学ぼうとし、北京や上海の大型書店でもベストセラー・コーナーに温州人のビジネス成功の秘密を解き明かした本が数多く並んでいる。本連載で第1回から3回目に取り上げた『温州人財富真相』(日本語訳書名:商機を見いだす「鬼」になれ)も、温州人の商売がうまくいっている理由を9つのキーワードで解き明かした書籍だった。類書も多いが、それらはすべて温州人の商売がうまくいく理由を学び、読者のビジネスに活かす目的で書かれた書物だ。2011年夏までに刊行された温州人関連の書籍の多くはその路線に則ったものであった。

 ところが、2011年秋、温州で「高利貸し危機」と言われる現象が起きた。温州人の快進撃にほころびが見えたのである。雑誌などで「温州危機」の特集が組まれ、閉鎖した工場の前にたむろする「高利貸し」の写真などがセンセーショナルに報じられた。今回取り上げた『温州资本干的就是和你不一样』はその温州危機の後に書かれた書物で、表紙には次のような言葉が並ぶ。

 温州資本の輝ける20年。彼らは全国各地を駆け巡ったが、その実態は?

 山西省、ドバイ、海南島…。温州の不動産投機団の蹉跌。その真相は?

 新エネルギー、ベンチャー・キャピタル、民間金融…。温州資金の将来は?

 温州商会会長の周徳文があなたのために、温州資本が『高利貸し危機』を如何に乗り越えるかを解説する

  本書の解説に入る前に、なぜ温州で「高利貸し危機」と言われる事態に陥ったか、その背景について少し触れておこう。温州という町は、中華人民共和国で初めての民間の金融業者が生まれた場所だ。もともと四方のうち三方を山に囲まれ、貧しい土地だった温州。「改革開放政策が始まるまでは町中物乞いだらけだった」というほどの貧しさだった。それが改革開放政策により、それ以前に比べ自由に商売を始められるようになった。そのため「100人温州人がいれば99人は自分で商いをしており、残りの一人は開業の準備をしている」という言葉があるように、温州人はこぞって「老板(ラオバン:社長のこと)」を目指すようになった。

 元は貧しい土地だし、政策的にも重視されていない土地柄だったため、大きな国有企業もない。その中で起業するために彼らは「抬会」というシステムを発展させた。日本の「無尽講」のようなシステムで互いが少ない資金を融通し合うのだ。正規の銀行は貸付基準が厳しく、また少額の貸し付けも受けづらい。それ故、温州では抬会以外の民間金融も発展し、今もそれは変わらない。そのため温州では一つの企業の浮沈が多くの一般市民に影響を与える。その結果が上述のように閉鎖した工場の前に債権者が詰めかけるという事態になる。

 本書ではそれまで「快進撃」を中心に報じられてきた温州の危機を見つめ、その問題点などを解き明かした書である。筆者自身が温州商会(組合のようなもの)の会長であるため全くの客観的分析とは言えない点もあるが、温州資金の今までと今後を考える上では示唆に富む内容であることは間違いない。

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いずれも10:00~18:00
会場:京王品川ビル セミナールーム(東京・品川)
主催:日経テクノロジーオンライン
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