「やっぱり、寂しいですね」――。

「photokina 2012」に設けたKodak社のブース
 あるカメラ・メーカーの技術者が、ぼそりと胸の内を明かしてくれました。先月、ドイツで開催された展示会「photokina 2012」の会場でのこと。

 彼の視線の先にあったのは、米Eastman Kodak社のブースでした。何が寂しいのか。それは、Kodak社が同社のブースにカメラを1台も置かなかったことです。

 「切磋琢磨してずっとやってきたんですが、時代の流れですかね・・・」

 かつてKodak社は、カメラ用フィルムで市場をリードし続けた上に、デジタル・カメラをいち早く製品化。2006年には世界シェアで上位3社の一つとして確固たる地位を確立していました。

 ところが、業績の悪化から2012年1月に連邦破産法第1条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請し、同年2月にはデジタル・カメラ関連事業からの撤退を明らかにしました。そして、デジタル・カメラとポケット・ビデオ・カメラ、デジタル・フォトフレームの製造部門を段階的に廃止することを決断したのです。

 そんな中で迎えた今回のphoptokina 2012。Kodak社ブースの主役は、業務用の大型プリンターや店頭での写真プリント機などでした。photokinaが終わってすぐの9月28日には、一般消費者向けのインクジェット・プリンターの販売を終了することも発表しており、“民生離れ”を加速させる姿勢をはっきり示しました。

世界進出を狙う米ベンチャー