相対的に堅調な北米、底割れの欧州、成長鈍化の新興国

 一方、液晶テレビの最終需要は想定より悪化傾向が続く。米国では、2012年5月下旬ごろから46インチ以上の大型サイズのハイエンド、直下型LED採用のミドルエンドなどの販売が鈍化、在庫が増しつつある。同年6月は販売数量の対前年比(YOY)がこれまでの1桁成長から横ばいか若干のマイナスに転じたとみられるものの、住宅販売の回復基調入りローエンド製品の販売も堅調なことから、同年7月には再びプラス圏に回復、同年8月は若干鈍化しているものの粘り腰を見せている。

 欧州はドイツを除き前年割れが続いており、製品供給の抑制が販売悪化に追い付かず、再び在庫水準が上昇している状況。頼みのドイツも減速傾向にあり、ポジティブな要素が見られない。日本国内はYOY6割以上の減少ペースが続き低調であるが、ドイツ証券(以下「当社」)の想定線上で推移。新興国はおしなべて好調であるものの、中国以外のアジア(インドなど)で成長率が鈍りつつある地域が散見される(為替減価の影響など、マクロ要因と考えられる)。中国は労働節商戦が不調に終わり若干在庫が堆積しているものの、同年6月1日からの省エネ補助金制度施行により、基準に符合しない製品の在庫一掃に腐心しつつ、新製品の投入を急いでいる。これはむしろポジティブなトレンドとなる可能性がある。同年8月以降、国慶節商戦に向け、テレビ、スマートフォン向けのパネル出荷が増勢にある。

 パネル価格についての見方は、前述の通り、サイズによって状況は異なる。ただし、基本的に横ばい圏(一定範囲内でのボックス推移)という見方に変更はない。需給が逼迫気味のG7/G7.5で生産されるサイズ(40/42/50インチなど)は繁忙期を終える同年10月あたりまでは少なくとも需給逼迫が続く可能性が高いが、他のサイズとの相対的な位置づけや、セットブランドの許容範囲を考えると、価格上昇の余地は大分狭まってきた。一方、需給が最も緩みやすいとみられている32インチについては、BOE TECHNOLOGY GROUP社(京東方科技集団)やChina Star Optoelectronics Technology(CSOT)社(華星光電)といった中国の新興2社の増産の動きが本格化してきたが、韓国・台湾メーカーが他サイズへのシフトによる32インチの減産を進めている。その影響で、32インチのグローバルでの総供給量は700万枚/月程度での停滞から2012年8月には850万枚/月程度に上昇したが、需給逼迫感は収まっていない。32インチの価格も横ばい圏での推移が想定される。注意すべきは同年11月~2013年2月の期間であり、欧米年末商戦向けの調達が終わった後の状況であろう。