中国で第12次5カ年計画(十二五計画)により積極的な産業構造および体制の調整が行われているが、ここしばらくは「世界の電子製品の主要生産基地」という位置付けに変わりはない。これは、電子機器のキーパーツである様々な能動・受動素子を搭載し、端末製品技術の発展を大きく左右するプリント基板(PCB:printed circuit board)においても言える。中国はPCBを近隣地域の関連メーカーへ供給し、顧客サービスを行うなど、世界の主要生産基地となっている。

 台湾工業技術研究院IEKの統計によると、2011年の世界PCB生産額は591億5000万米ドルである。このうち中国が43.1%(2010年は40.3%)、日本が16.0%(2010年は18%)、台湾が12.3%(2010年は12.8%)を占める(図1)。2015年は、中国のPCB生産額が343億2000万米ドルに達し、世界の生産額の半数に迫る49%を占めると予想される。

 さらに製品の種類別に分析すると、2010年に需要が最も多かったのは、多層基板製品である。主なアプリケーションは、パソコン(ノート・パソコンを含む)、通信機器、民生機器などである。2位はフレキシブル基板(FPC)、3位は高密度配線基板(HDI)である。これらは主に携帯電話機などのモバイル機器に使用されている。また、IC基板では、まだ日本、台湾、韓国にかなり後れを取っている。

図1 世界主要地域のPCB生産額
出典:工業技術研究院IEK(2012年9月)
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 このように、世界の電子機器の多くは中国に生産のバリュー・チェーンが移り、これにより中国地区のPCB生産額が世界1位に押し上げられている。しかし、中国で生産されている川下の製品は、パソコン(ノート・パソコンを含む)やデジタル家電などのミッドレンジやローエンドの電子機器に集中している。このため、PCB製品も従来型の多層リジット基板などのローエンド製品に集中し、全製品の半分以上という、他の先進地域と比べても高い比率を示している。

 しかし、中国ブランド企業の発展と中国国内資本のPCBメーカーの急速な成長によって、中国のPCB産業の形態とPCBメーカーの経営方法に変化が見られるようになってきた。特に顕著になっているのが、以下の三つの動向である。