動向1:ワンストップ・サービスへの積極的なリソース投入

 電子機器の多様化・短寿命化により、製品の少量生産化、カスタマイズ化が進んでいる。中国PCBメーカーもこの動きに積極的に対応して、このニッチ市場での競争を展開している。具体的には、ワンストップ・サービスに対して積極的にリソースを投入している。

 ワンストップ・サービスのメリットは、中小量PCB製造工程の合理化および顧客のPCB設計の人件費削減が可能で、中小量のサンプルの高速生産に適することである。しかし、中小量生産のために社内の生産能力を使い、大量生産品は他社に委託することになるなど、生産ラインの転換コストが発生する。ワンストップ・サービスでは、顧客の数が多くなり、内容も多種多様である。従って、PCBメーカーが業務を管理するのは容易ではない。アプリケーションは、少量多様型の製品がターゲットとなる。Shenzhen Shennan Circuits社(深南電路)、Shenzhen Fastprint Circuit社(興森快捷)、Founder PCB社(珠海方正)、Zhuhai Motomori Electronic社(珠海元盛電子)などが積極的にワンストップ・サービスを実施している。 

図2 中国資本のPCBメーカーのワンストップ・サービスへの取り組み
出典:工業技術研究院IEK(2012年9月)
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動向2:中国メーカーによる沿海地区回帰

 2008年から、重慶などのコンピュータ生産基地の内陸移動が始まった。米HP社、米Dell社などの国際大手ブランド企業も次々と西部に拠点を配置し、続いてHon Hai Precision社(鴻海)、Compal Electronics社(仁宝)、Wistron社(緯創)などのOEM工場も沿海地区から西部の内陸地区へ移った。これに引きずられるように、HannStar Board社(瀚宇博徳)、Tripod Technology社(健鼎)、Zhichao Technology社(志超)、Huatong社(華通)などの台湾PCBメーカーの中国拠点も西部へ移り始めている。

 しかし現在、Founder PCB社(珠海方正)、Shantou ultrasound PCB社(汕頭超声)、Zhuhai Motomori Electronic社(珠海元盛電子)、Zhuhai Quanbao Electronic社(全宝)など、ほとんどの中国資本PCBメーカーは沿海にとどまっている。また、Bomin Electronics社(博敏電子)は江蘇省大豊で生産拡張を行い、Shenzhen Shennan Circuits社(深南電路)も江蘇省の南通と無錫に工場を設立している。工場規模を維持するほどの市場の需要があるか否か、内陸の労働力流動と管理における問題、および廃水処理許可証など全体的経営環境などの観点から、沿海地区にまだ発展の可能性があると見ているからである。

 内陸地区は沿海地区と比べて低賃金であるが、1人当たりの生産性がまだ低く、これが管理・運営上の課題となっている。例えば、同一の生産ラインでも、沿海では労働者10人で十分であるのに対して、内陸では15人を必要とする。平均賃金は低くても、総合的に見ると労働コストの節減にはならない。もう一つの理由は、顧客関係である。中国資本業者の顧客はほとんどが国内の中小エレクトロニクス企業である。多くの企業の拠点は華南と華東にあり、内陸へ移る必要がない。中国資本PCBメーカーが内陸に移動する誘因はないのである。移動するとしても、Founder PCB社(珠海方正)の重慶工場や Guangdong Shengyi Group社(広東生益集団)のように、ほとんどが合併買収の手法を採る。台湾メーカーのように内陸に新規生産ラインを構えることはない。