動向3:中国スマートフォンと次世代モバイル通信インフラの内需市場の立ち上げ

 2012年の世界スマートフォン市場は6億7500万台に達し、中国が1億3200万台で世界全体の約20%を占めると予想される。2016年までに3億台超が見込まれ、中国のスマートフォン市場が世界の電子部品メーカーのターゲットになっていることがわかる。将来、中国が世界スマートフォン市場の成長を強力に導き、米Apple社や韓国Samsung Electronics社などの国際ブランド企業だけでなく、ZTE社(中興)やHuawei社(華為)などの中国ブランド企業も力を付けるだろう。統計によると、2012年4月の中国の第3世代(3G)スマートフォン市場は、Samsung社が22.8%のシェアでトップに立っている。2位グループが、それぞれ1割のシェアを有する CoolPad社(酷派)、Huawei社(華為)、Lenovo社(聯想)、 ZTE社(中興)で、これら4社合計で全体の約4割を占める。4社のうち成長率が最も高いのはCoolPad社(酷派)で、5位から2位に躍進している。

 これまでZTE社(中興)やHuawei社(華為)などの中国ブランド企業と密接かつ長期的に提携してきた中国資本のPCBメーカーも、このスマートフォン市場が発展するチャンスを見逃すはずはなく、政府筋を通してさらなる提携の可能性を探っている。

 中国の携帯電話通信の3大企業が推し進める「1000元スマートフォン戦略」は、中国3Gスマートフォンの競争形態を変貌させた。ZTE社(中興)、Huawei社(華為)、Lenovo社(聯想)、CoolPad社(酷派)などがミッドレンジの価格のスマートフォンを市場に投入し続ける中で、将来は1000人民元以下での価格競争が中心となっていくであろう。この低価格市場によって、低コストPCB市場における競争も激しくなるだろう。

IEKの視点

 すでに世界最大のPCB生産基地となっている中国では、中国資本のPCBメーカーが長期戦略として、中小型、大陸ブランド、特殊アプリケーション市場に取り組んでいる。世界のPCB産業の高度な競争とは距離を置いて、ニッチ市場をターゲットにしている。中国資本のPCBメーカーには、以下の発展の優位性と機会がある。

●国営企業として、注文元が確保される。
●外資系企業との共同出資により、間接的に生産技術と能力を向上できる。
●ワンストップ・サービスによる柔軟な生産体制が顧客に認められる。
●中国ブランド企業のスマートフォンが発展する。
●中国に将来4G基地局が設置されれば、新しい商機をもたらす。
●無線通信が発展し始めた国家(インドなど)に低価格PCB製品を提供できる。

 しかし中国PCB産業は、これまで技術の後れ、不十分な国際化により、産業全体の実績において、リーディング企業との間には大きな落差がある。また、台湾企業や日系企業が生産技術の向上と顧客関係の確立を進めるなどして中国の巨大な市場に進出しており、中国ブランド企業が国際市場に進出しようとする際に技術とコストを比較して、中国大陸以外のPCBメーカーを選択する傾向がある。これらが、世界へ進出しようとする中国資本PCBメーカーにとって大きな課題である。