2012年8月における台湾電子業界の代表的企業41社の売上高は、対前年比(YOY)-3.9%、対前月比(MOM)-4.3%だった。ドイツ証券(以下「当社」)では、例年のMOM一桁後半から10%程度のプラスよりも低いMOM +2%±5ポイントを想定していたが、実績は想定下限を若干下回った。

 傾向は前月までと大きく変わらないが、「iPhone 5」関連サプライヤーの増収、LED、液晶パネル、受動部品などで国慶節や年末商戦に向けた増産・増収傾向、Siファウンドリ関連の腰の強さなど、多少繁忙期らしい動きも見られる。一方、DRAMや太陽電池は失速、ノート・パソコン(PC)は大幅下振れ、携帯電話機もフィンランドNokia社向けスマートフォンなどが停滞しており、元気がない。米Apple社向けを中心としたEMS事業の好調が続く台湾Hon Hai Precision社は「iPad」生産調整や、iPhoneの新製品交代への端境期による減産などによってYOY+4%、MOM-11%。ちなみにHon Hai Precisionを除いた各製品分野の代表的企業40社ベースではYOY-7.6%、MOM-0.4%と、当社想定範囲内に収まっている。

 最終製品では、薄型テレビ、PC、携帯電話機と全アプリケーションで需要が弱含む状況が続いている。繁忙期を控え、主要アプリケーションの大手ブランドは一部を除いて在庫積み上げに慎重な姿勢を崩していない。その結果、EMS/ODM、部品メーカー、部材メーカーとバリュー・チェーン全体が生産を抑制することになり、意図せざる在庫がたまりにくい状況となっている。先月の当レポートにて、「最終需要に改善の兆しがみられるか、主要ブランドが姿勢を変えない限り、「思ったより弱い」生産状況は続き、このまま今年を終えてしまう可能性も否定できない」と述べた。実際は、iPhone 5向け以外に中国国慶節向けや年末商戦に向けた薄型テレビの作り込みや、中国向けスマートフォンなど、一部には繁忙期らしい盛り上がりが見られるものの、全体的には弱含みの状況が続いている。

 PC系(ノートPC、マザー・ボード、モニター)は、最終需要の弱さ、新OS投入前の買い控えなどから、弱含みの状況が続いてきたが、8月に入りさらに底割れの様相を呈している。今年は下期にWindows8+新CPUのUltrabookが大挙投入されることを前提に、上下期の生産出荷比率が例年より下期偏重となっている。しかし、低調な生産出荷が8月も続き、その低調ぶりは想定を超えていた。その結果、主要各社は9月実績を待たずして3~4Qの製品生産・出荷の見通しを下方修正している。これは在庫堆積リスクや、Windows8搭載ノートPCやUltrabook新製品の販売不振時の急激な生産調整リスクの低下を意味するともいえる。しかし、上記のタブレット新製品は積極的な市場投入が行われており、価格面での優位性が高いことから、ノートPC/Ultrabook側もそれなりの巻き返し策を取らないと、市場をタブレットに奪われてしまうリスクがさらに高まろう。最後の手であるOSやマイクロプロセサの価格引き下げの有無に注目したい。