サービス重視の流れは必然

 基盤構築の次に、サービスが重視される方向に進むのは必然の流れである。図1は、コンピューター業界でよく議論される「垂直統合から水平分業へ」を説明したものである。産業の立ち上げ当初はそれぞれの企業がすべての機能を抱えるしかないが、事業が拡大していくと、効率の高さを求めて急に分業が進み始める。サービスについても垂直統合企業から切り離され、さまざまなサービスプロバイダーが登場し、活発な競争が起こってサービスが多様化していく。

図1●IT産業の発展段階における垂直統合から水平分業への動き
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 これはコンピューター業界にとどまらない。通信業界も同様の経緯をたどった。そして、同じ流れが電力などのエネルギー業界、さらに行政にも押し寄せているのである。

欧米で先行、日本でも

 そこで日経BPクリーンテック研究所は調査を実施し、スマートシティに関するサービスを、世界のスマートシティ・プロジェクトから抽出してみた。すると、既に多くの地域でサービス事業への取り組みが始まっている現状が浮かび上がってきた。

 中でも、米国・欧州はサービス色を強く打ち出している。事実、欧米ではサービス提供に的を絞ったベンチャー企業が多数生まれている。4Home社、iControl Networks社、Ingersol Rand社、C-Power社、EnerNoc社、Comverge社、EcoFactor社、EcoBee社、Greenwave Reality社、Ecotality社など、エネルギー関連のサービス事業から出発した企業が多いが、セキュリティーやホームオートメーション(HA)などにサービスの内容を拡大してきている。サービスを経験やノウハウに頼るのではなく体系化しようとする「サービス・サイエンス」と組み合わせようとする動きも表面化している。

 一方、日本ではサービス化の流れは起こりつつあるものの、単発・散発的であるという指摘は多い。