名刺にも登場のQQ番号

 名刺では使われている個人の連絡情報は、大昔は固定電話と住所だけだった。その後、携帯電話番号やEmailアドレスが登場した。中国では、それら以外にもう1つ、名刺に記載される個人連絡情報がある。それは、QQというインスタント・メッセンジャー(IM)サービスのアカウント番号だ。

 QQが誕生したのは、1990年代の末だった。1998年に設立されたTencentは、「QQ」とネーミングしたIMソフトを開発した。それは、当時流行していた海外版のIMソフトの中国語版だったが、ネットで無料配布したことであっという間に利用者が拡大した。さらに、そのころから普及し始めた携帯電話機に載せることに成功、通信キャリアから通信料の一部をもらうことで、収益化もできた。

 それから、QQは、中国では特に若者においては知らない人がいない、そして名刺にも載せるほど、中国社会で広く浸透した。仕事とプライベートのために一人で複数のアカウントを使う人も多い。

 IMの模倣から始まって成功したQQは、「模倣+改良=イノベーション」との信条で、オンラインゲームや電子商取引(EC)の領域でも、後発ながら大成功を収めた。IM+オンラインゲーム+ECという三本柱の強さで、Tencentは中国のインタネット業界で「帝国」を築いたとも言われている。そうした中で同社は、新浪微博に追随するように、IMベースのQQを微博へと発展させていった。

 Tencentの微博では、情報サイトとして最も有名な新浪微博が打ち出した「有名人」戦略とは違い、IMで獲得した膨大なユーザーをベースにした「庶民」戦略によって攻勢をかけた。その際、武器としたのが、既存のECとオンラインゲームである。特に、ECで構築した課金システムとオンラインゲームで取り込んだユーザーを活用することにより、競合他社より、いち早く微博の収益化に成功している。IMで始まったQQは、ソーシャルメディアの世界でも、進化しつつある。

図5●QQのIM画面(左)とアプリ画面(右)
筆者のスマホの画面。「我的好友」は親しい友達、「朋友」は友達、「家人」は家族、「同学」はクラスメートの意。
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 微博として発展してきたQQでも、IMの機能は依然として健在であり、かつ発展してきている。テキストだけではなく、画像、音声ファイルなども手軽に転送できる。IMの画面の右下の「更多」(もっと見る)から、Tencentの微博を含め、さまざまなアプリを利用できる。