こうした状況について、台湾紙『旺報』(2012年9月24日付)は、「中国の人件費が上がり続けていることや、労働力不足がフォックスコンの拡張計画に影響を与えるのは必至だとの見方が、市場や業界で強まり始めている」と指摘。その上で、フォックスコンが中国よりもコストの安い国・地域に生産拠点をシフトするために、候補地捜しを進めているとしている。

 この他、今回の暴動をきっかけに、フォックスコンがロボット導入による自動化をさらに加速するとの分析もあった。21世紀経済報道(9月27日付)によると、台湾の民間調査会社、Topology Research Institute(TRI=拓墣産業研究所)の左鵬飛研究員は、「フォックスコン中国工場で働くワーカーの主力は目下、20歳前後、すなわち『90後』と呼ばれる1990年代以降に生まれた若者たちだ。これら90後の若者たちは、1970年代生まれはもとより、一人っ子政策導入後の第一世代である1980年代生まれに比べても、我慢強さが足らず、一方で権利意識ばかりが強くなっていると言われる」と指摘した。その上で、中国で高齢化と製造業の人手不足が進む環境下、フォックスコンが人手の代わりにロボットを大量導入するターニングポイントが2014年ごろになるとの見方を示した。

 フォックスコンは2011年8月、2012年にまず30万台、3年以内に100万台のロボットを生産ラインに導入する計画を公表。2012年1月には、暴動のあった太原工場と同じ山西省の晋城工場に、ロボットを自製するラインを稼働させている。

 ロボットによる自動化推進の方針を決めた理由についてフォックスコンは、単純で危険が伴う作業から従業員を解放することが目的であり、人減らしのためではないと説明している。しかし市場や業界では、人件費高騰や、2010年春に同社深セン工場で従業員12人が連続で飛び降り自殺を図る事件が起こるなど、難しさを増す中国工場の管理におけるリスクやコストを減らすことが目的だとの見方が根強い。

 TRIの左氏は、「ロボット技術が成熟するにつれ、フォックスコンでは2014年前後にロボットのコストが人件費を下回るのではないか。中国政府からハイテク製造業を対象とした補助金を獲得できれば、ロボットのコストが人件費を下回る時期はさらに前倒しになる可能性もある」と見る。

 従業員による暴動、人集めの難しさ、人件費の高騰……。フォックスコンで相次いで表面化した問題は、中国での製造が限界に近づきつつあることを示唆するものであり、かつ、中国に製造拠点を置く、フォックスコン以外の製造業が直面する問題でもある。